古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

古事記中巻

ホムチワケが話す

出雲の大神に参拝したホムチワケの一行は、斐伊川のほとりに仮宮を建てて滞在していた。 そこに、出雲国造の祖であるキヒサツミがホムチワケに拝謁に訪れた。 キヒサツミはホムチワケを歓迎し、斐伊川の川下に青葉で飾り物を建て、料理を献上した。 ホムチワ…

出雲で祈る

こうして、ホムチワケとその一行は連れ立って出雲へ向かって行った。 出雲に到着した一行は、早速、オオクニヌシの大神のもとに参拝すべく、神殿に向かって行った。 そこは、オオクニヌシが日本の国を天の神に譲る条件として建てられた、壮大な神殿であった…

出雲に向かう

フトマニの占いの結果を聞いた天皇は、早速ホムチワケを出雲に向かわせることにした。 さらに天皇はホムチワケの従者に誰を副えて遣わせばよいか占わせた。結果は「アケタツを副えて向かわせよ」というものだった。 そこで天皇はアケタツにうけい(誓約)を…

オオクニヌシ、再び

白鳥を見ても、ホムチワケは言葉を発することは無かった。天皇は息子が離さないことに心を痛めていた。 そんな折、天皇が寝ているときに、夢の中に一人の神が現れていった。 「そなたの御子が言葉を話さないのは、わたしの神祟である。私は昔、神殿を建てて…

白鳥は飛んでいく

サホビメの忘れ形見となった天皇の御子、ホムチワケ。天皇は愛情をもって育てていた。 尾張に二股に分かれた珍しい杉があると聞くと、わざわざその杉を取ってこさせて二股に分かれた小舟を造り、それを大和の池に浮かべて御子を連れて遊んだ。 しかしそのホ…

サホビメとサホビコの最期

天皇は御子とともに后のサホビメも取り返す目論見だったが、その策略はサホビメに見抜かれていた。兵士は御子だけを取り、サホビメの奪還には失敗した。 天皇は意を決し、軍勢の最前線まで出てきた。 「サホ!聞こえてるか!出てきてくれ!」 天皇は叫ぶ。 …

天皇の計略 VS サホビメの知恵

天皇は、生まれた子もサホビメも一緒に自分のもとに取り戻す魂胆だった。 天皇は兵士の中から力が強く、なおかつ身軽で敏捷な者を集めた。そして彼らに命じた。 「御子を受け取るときに、同時に母親も一緒に連れてこい。髪であろうが手であろうが、とにかく…

天皇、攻撃をためらう

サホビメは宮中を抜けだし、サホビコの屋敷へ入っていった。 その報は、サホビコの屋敷に向けて進軍していた天皇にも入った。 「なに・・・サホビメが屋敷の中に・・・子供もみごもっているだと・・・」 天皇は困惑した。 兄サホビコは天皇を暗殺しようとし…

サホビメ、兄のもとに向かう

自分を暗殺しようとしたサホビコを討つべく、天皇は自ら軍勢を率いてサホビコの屋敷に向かっていた。 一方、サホビコにも、天皇暗殺に失敗したとの報は入っていた。すでにサホビコは天皇の軍が攻めてくることを見越していた。サホビコも軍勢を集め、屋敷の周…

サホビコの討伐に向かう

サホビメから話を聞いた天皇は 「そうか・・・あやうくだまされるところだった・・」 と言った。 サホビメは震えながらひれ伏していた。 未遂とはいっても天皇に刃を向けたのだ。この場で殺されても仕方ないほどの大罪だ。 しかし天皇は、やさしくサホビメに…

サホビメの話

わたしの兄のサホビコが、私に向かって訊いたのです。自分と陛下と、どちらを愛しているか、と。 あまりにも突然なことでした。 兄が目の前にいるものですから、私は思わず、お兄様のほうを愛しています、と答えました。 すると兄は 「ならば自分とお前と、…

垂仁天皇と皇后サホビメ

崇神天皇の崩御後は、その御子イクメイリビコが皇位を継いだ。第11代の垂仁天皇である。 天皇は后のサホビメを寵愛していた。その日も天皇はサホビメの膝枕で、安らかな気持ちで昼寝をしていた。 すると、何を思ったのか・・・サホビメは短刀を取り出した。…

崇神天皇の御代

こうしてオオビコは、タケハニヤスの平定が終わると、最初に命じられていた通り越の国に赴いた。 一方で、オオビコの息子のタケヌナカワが指揮する軍が、大和から東のほうへと進軍していた。 そして父のオオビコの軍と、息子のタケヌナカワの軍は、東国の地…

タケハニヤス軍の敗走

天皇の異母兄タケハニヤスを征伐すべく、オオビコの軍は山代に向かっていた。 タケハニヤスも軍勢を整えて、今まさに宮中に攻め込もうとしている時だった。両軍は和訶羅川(わからがわ)ではちあわすことになった。 タケハニヤスの軍とオオビコの軍は、川を…

オオビコがタケハニヤスの討伐に向かう

不気味な言葉をつぶやき、その後ふっと消えた少女・・・オオビコが不吉な、不安なものを感じるのは当然だった。 オオビコはすぐに引き返すと、天皇にこのことを申し上げた。 オオビコから話を聞いた天皇は、じっと考えていたが、 「これは、山城に住む、わた…

少女からのメッセージ

オオタタネコの話を、天皇は苦虫を嚙み潰したような顔で聞いていた。 『・・・まあ、神武天皇の后の、便所でホトをついたという話よりはましか・・・』 さて、話は変わる。 崇神天皇の御代、まだ日本の各地には天皇の支配に属していない豪族がまだたくさんい…

オオタタネコの話

イクヨリタマビメはとても美しい娘でした。姫の両親は悪い男が寄ってこないようにと、姫を屋敷の奥に隠し、姫の部屋の戸には鍵をかけて誰も出入りができないようにしていました。 しかし、それにも関わらす、姫は身ごもったのです。両親は姫に相手は誰かと問…

オオタタネコとオオモノヌシ

こうして天皇はオオタタネコを神官としてオオモノヌシを祀り、国を襲った疫病は治まり国は安定した。 ある日、天皇はオオタタネコに言った 「オオタタネコ、感謝するぞ。そなたのおかげで国は鎮まり、民も活気が出て日本の国はますます発展するだろう。 とこ…

オオモノヌシを祀る

天皇は召し出したオオタタネコに尋ねた。 「そなたがオオタタネコか。そなたはオオモノヌシの大神とはどういう関係にあるのだ?」 「はい、オオモノヌシは私の5代前の先祖になります。オオモノヌシがイクヨリタマビメを娶り生まれた子の末裔でございます」 …

オオモノヌシの祟り

皇祖アマテラスの末裔イワレは、日向を出港し苦難の旅の末、大和の地で初代の神武天皇として即位した。その末子、カムヌナカワが2代目の綏靖天皇として即位した。 時は流れ、安寧天皇、懿徳天皇、孝昭天皇、孝安天皇、孝霊天皇、孝元天皇、開化天皇と、親か…

二代目天皇の即位

タギシミミの反逆を知った3人の御子たち、ここは先手を打って、タギシミミを亡き者にしてしまおうと考えた。早速今夜に実行することにした。 しかし長兄のヒコヤイミミはおじけづき、逃げ出してしまった。そこで次兄のカムヤイミミと、末子のカムヌナカワで…

タギシミミ、皇位を狙う

神武天皇と皇后イスケヨリヒメの間には3人の男児が産まれた。上からヒコヤイミミ、カムヤイミミ、カムヌナカワと名付けられた。 さて、天皇がまだ日向にいた時代に結婚してタギシミミという子が産まれていた。 そしてタギシミミは天皇が即位した後、天皇を追…

オオクメの眼

天皇はオオクメとともに、イスケヨリヒメが住む高佐士野に来ていた。 するとそこに、少女が7人、連れ立って歩いてきた。 そこでオオクメは天皇に言った。 「あの中にイスケヨリヒメがおります。どなたかお分かりですか? 「先頭を行く、背の高い美しい娘では…

皇后、神の御子

イワレは天皇として即位した。後に神武天皇といわれるようになる、初代天皇の誕生である。 即位後のあわただしさも落ち着いた数か月後、天皇は皇后となる女性を探していた。もともと日向にいたときに結婚をし子もいたが、さらに国の基礎をかためるため皇后と…

神武天皇の即位

こうして各地の荒ぶる神を平定したイワレは大和に入った。 イワレは宣言した。 「私は東に向けて出発して以来、天の神の威光をもって国を平定した。これからは大御宝(おおみたから)である日本の民の幸せを願い、平安に日本の国を統治していかねばならない…

日向からの東征、終わる

イワレはナガスネビコに向かって言った。 「お前が見せたものに偽りはない。確かにお前が君と仰ぐニギハヤヒは天の御子のようだ。だが、私も天の御子なのだ」 そういってイワレも、自身がアマテラスから代々受け継いだ矢と武具を、ナガスネビコに見せた。 そ…

天の御子は・・

戦いはイワレの勝利だった。 イワレは飛び去っていく金の鵄に向かって言った 「アマテラス大御神は、しっかり我々のことを見守ってくれていたんだ・・・ありがとうございます」 そこに、イワレの兵につれられて、敵軍の将であるナガスネビコがイワレの前に引…

決戦・・撃ちてし止まん!

熊野に上陸し、各地の豪族を従え、また征服しながら北上してきたイワレの一行。季節は12月、冷たい空気が張り詰める中、いよいよ大和に迫ろうとしていた。 かつてイワレとイツセの上陸を阻み、兄のイツセを射殺したナガスネビコの本拠地である。 もちろん、…

今度はイワレが策略を・・

イワレは単身、ヤソタケルの陣地に出向いていった。そしてヤソタケルに会うと、頭を下げていった。 「ヤソタケル様、我々はあなたに反抗する気は全くありません。あなたのもとに仕えたいと思い、日向からはるばる出向いてきたのでございます. そのあかしに…

ヤソタケル

エウカシは自分が仕掛けた罠にはまり圧死してしまった。 オトウカシはイワレに恭順の意思を示し、改めてイワレと兵士を招いて盛大な饗宴を開き一行を歓迎した。 そしてイワレの一行は宇陀の地を出発し、忍坂(オシサカ)についた。 そこはヤソタケルの支配下…