古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

古事記中巻

仁徳天皇の即位

反逆者オオヤマモリを誅殺した皇太子ウヂノワキ。そしてウヂノワキは応神天皇の後を継いで天皇に即位した・・ ・・訳ではなかった。 ウヂノワキは、次の皇位はオオサザキが継ぐべきだと言って、天皇の座を辞退したのである。 ウヂノワキは言う 「私は弟です…

オオヤマモリの最期

皇太子ウヂノワキを暗殺するため、渡し舟に乗ったオオヤマモリ。船頭は何も言わず、船を漕ぎ出した。 秋の心地よい日差しの中、渡し舟は進む。 川の真ん中に来たとき、オオヤマモリは船頭に語りかけた 「おい、船頭!この山には大きなイノシシがいると聞く。…

オオヤマモリ、皇太子のもとへ

オオヤマモリ反逆の情報をオオサザキから聞いた、皇太子ウヂノワキ。策略をもってオオヤマモリを迎え撃つことにした。山へ紅葉狩りに行幸するという偽の情報を流したのである。 さて、その当日。宇治川のほとり、川の向かい岸の山には絹の幕を張り巡らして、…

オオヤマモリの反逆

さて、はや十数年の時が経ち、天皇は崩御された。 天皇は皇太子として末子のウヂノワキを指名していた。ウヂノワキはそのころ、りりしい少年に成長していた。 天皇の御子のうち、オオサザキは父の言葉に従って次代の皇位はウヂノワキとするつもりでいた。 し…

皇太子は誰だ?

こうして天皇とヤカハエヒメとの間に生まれた御子、ウヂノワキ。天皇は幼い御子を特にかわいがっていた。そして将来の皇位はウヂノワキに継がせたいと思うようになっていった。 ある日、天皇は御子のオオヤマモリとオオサザキを呼びだした。そして二人に 「…

天皇、また后を迎える

ある日、天皇は山城の国に巡行に出ていた。そして木幡村に来たときのことだった。 そこにとても美しい少女が歩いていた。天皇はその少女を見るなり、ぜひ自分の后にしたいと思った。 思えば、息子のオオサザキに迎えに行くよう命じたカミナガヒメは、願いか…

香ぐわし花橘

新嘗祭の宴席上、カミナガヒメを皆に紹介した天皇。その場にいたものは、天皇が新しい后を紹介したものと思っていた。 カミナガヒメは天皇のもとに進む。すると、天皇はカミナガヒメに柏の葉で作った杯を持たせ、酒を注いだ。柏の葉は神聖なものとされ、柏の…

そして、建内宿祢は・・・

建内宿祢(たけうちのすくね)は、突然訪ねてきたオオサザキとカミナガヒメを見て言った。 「おや、オオサザキ様、どうなさいました?それにそちらの娘さんは?」 「いや、タケウチ!実はそのことで、お願いがあるんだ・・」 オオサザキは一旦カミナガヒメを…

オオサザキは建内宿祢に・・

天皇はある日、日向に住むカミナガヒメが、とても美しいという話をきいた。そこで天皇はカミナガヒメを自分の后として迎えるべく、大和に召し出した。 カミナガヒメは船で瀬戸内海を上り、難波の津についた。 天皇は自分の息子のオオサザキを呼び出した。そ…

石も逃げた

天皇は酒をとても好んでいた。 何しろ、幼少の折、建内宿祢に連れられた禊の旅から大和に帰還した時、母の神功皇后から神酒の歓迎を受けたのだ。成長してからは、何かにつけて酒を楽しんだ。 といっても別に酒癖が悪いわけでもなかった。酔っては明るく歌い…

応神天皇の外交

仲哀天皇の遺児であるホムダワケ、母の神功皇后の尽力もあり皇位を継ぐことになった。第15代の応神天皇である。 天皇の御代、母の皇后が征服した新羅から、土木技術者が日本にわたってきた。そこで天皇は建内宿祢に命じてこの技術者たちに灌漑用の百済池を造…

スクナビコナの酒

建内宿祢と御子ホムダワケは、大和に戻ってきた。 無事に禊を済ませて戻ってきた御子を見て、母の皇后オキナガタラシヒメは大喜びだった。 皇后は御子が帰ってくる日のために、酒を醸造して待っていた。 そして御子や建内宿祢、そして他に付き添って言った従…

名を取り替えよう

反逆者オシクマを征伐した後、朝廷の重臣・建内宿祢(たけうちすくね)は御子ホムダワケを連れて旅に出ていた。 旅の目的は、禊である。 敵を欺くための策略とはいえ、死者を運ぶ喪船にのせられた御子ホムダワケ。死者の穢れを祓う必要があったのである。 建…

オシクマ、敗北する

皇后と御子が乗る喪船の奇襲に失敗した、将軍イサヒ率いるオシクマ軍。 将軍タケフルクマ率いる皇軍は、オシクマ軍を河内から山城まで追い詰めていった。ところが山城の国で、急を聞いたオシクマの援軍が駆けつけてきたのだ。 オシクマ軍は勢いを盛り返し、…

皇后の逆襲

オシクマ率いる軍が待つ河内湾。そこに、御子ホムダワケを乗せた、偽りの喪船が入ってきた。喪船が岸壁に接岸する。 「行け!」 号令をかけたのはオシクマ軍の将軍イサヒだった。岸壁に接岸した喪船に向かって一斉に兵が斬り込む。 その時! 喪船から一斉に…

喪船に乗って

新羅から帰還後もしばらく皇后オキナガタラシヒメは筑紫の詞志比宮(かしいのみや)に滞在していたが、そのうち御子ホムダワケを連れて大和に戻ることになった。 しかし、皇后の不在中、大和では不穏な動きがあった。皇后の御子ホムダワケを差し置いて、仲哀…

いきなり鮎釣り

新羅からの帰還後もしばらく皇后は筑紫の国に滞在していた。 冬を越して4月上旬のある日、皇后は末羅県玉島里(まつらのあがたのたましまのさと)に巡行に来ていた。 新羅を従えた皇后は民衆に人気が高く、行く先々で大歓迎を受けていた。 皇后は玉島川のほ…

御子を産む

こうして皇后は新羅・百済を日本の統治下に置くことに成功し、船に乗って帰還していった。 ところで皇后は、既に仲哀天皇の御子を懐妊していたが、新羅への渡航前にはすでに産まれようとしていた。しかし、この大事な局面において子を産むどころではない。 …

新羅を征服する

王宮の中で震えていた新羅国王。と、その時、家来の一人がやってきて言上した。 「王様、ヤマトの皇后が面会を願っておりますが、いかがいたしましょう?」 「なに・・ヤマトだと?!」 国王は、おびえたように言った、 「ああ・・ヤマト・・東方にある、天…

その時、新羅で

ここは朝鮮半島、新羅(しらぎ)の国。 新羅の王宮では、いつものように国王を重臣が取り囲んで政務が行われていた。その時、・・ ずずずずず・・ 突然、不気味な音が鳴り響いた。そして王宮は小刻みに揺れる。 「・・・なんだ、どうしたんだ?」 国王も重臣…

出陣‥玄海灘へ

皇后に依りついた神の神託を受けて、ただちに出兵の準備が整えられた。 海をわたるための軍船が用意され、兵站も準備万端整えられた。 「よし、いくぞ」 号令をかけたのは皇后オキナガタラシヒメである。夫を失い、御子を懐妊しながらも、皇后は自ら先頭に立…

皇后に御子が!

天皇の崩御に、詞志比宮(かしいのみや)は大騒ぎとなった。 急ぎ天皇の遺体を裳宮に安置した。 さらに国中に犯罪を取り締まるよう通達を出し、生きたまま獣の皮をはいだもの、逆さにして獣の皮をはいだもの、田を壊したもの、水路を埋めたもの、神域での放…

仲哀天皇の崩御

神功皇后ことオキナガタラシヒメは、巫女としての能力を持っていた。すなわち神の依代として、神の言葉を伝えることができたのである。 そして詞志比宮に天皇の軍が進軍し滞在している間、熊襲征伐の成否を占うことにした。 その夜、神庭にはかがり火がたか…

仲哀天皇の征西

ヤマトタケルの父・景行天皇の崩御後は、御子のワカタラシヒコが13代目の皇位を継いだ。後の成務天皇である。 しかし、成務天皇の御子は次の皇位を継ぐことは無かった。 そして成務天皇の崩御後は、ヤマトタケルの御子であるタラシナカツヒコが14代目の皇位…

白鳥となって

ヤマトタケルの崩御の報は、従者たちによって仕立てられた急使によって大和にもたらされた。 大和にいた妻や子たちは、みな急ぎ能褒野にやってきた。そして泣きながら、その能褒野の地に御陵を造り、ヤマトタケルを葬った。 葬った後も、妻や子たちはいつま…

大和し うるわし

杖をつきながらよろよろと峠を越えたヤマトタケル。 ヤマトタケルは尾津前(おつのさき)まで来ていた。そこに一本の松の木が生えていた。その松の木には見覚えがあった。 「おお、あの松は・・往路にあの松の下で食事したっけ・・あの時、木の下に剣を忘れ…

たぎたぎしく・・杖をついて

居醒の清水でようやく正気をとりもどしたヤマトタケル、再び大和に向かって歩き出した。 しかし、草薙剣をミヤズヒメのもとに置いてきて、伊吹山の神に呪われたヤマトタケル。その足取りはおぼつかなく、今にも倒れそうだった。 「ああ・・・私の心は、今ま…

伊吹山を降りる

伊吹山の神の怒りにふれ、突如振り出した冷たい雨と雹は、見る見るうちにヤマトタケルの体力を奪っていった。 足は震え、体は痙攣し、目はかすむ・・・もはやヤマトタケルは、伊吹山の神を退治するどころではなくなっていた。 「これはいけない・・・山を降…

伊吹山の神、怒る

ヤマトタケルは、伊吹山の神を討伐するために、山に登っていった。 その時、一頭の白い猪に出くわした。まるで牛のような、大きな猪だった。 ヤマトタケルはびっくりしたが、あまり恐怖感は感じなかった。 「なんだ、こいつ・・・まあおおかた、伊吹山の神の…

伊吹山に登る

ヤマトタケルは美濃の国から近江との境、伊吹山に来ていた。 東国を平定し、行く先々で歓迎を受けるヤマトタケルだったが、この伊吹山に来たとき、そこの住民から 「この伊吹山の神、好き勝手なことをして我々を苦しめています」 との訴えを受けた。 「よし…