古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2023-01-01から1年間の記事一覧

母の呪文

ハルヤマノカスミの自伝 6 異母兄のアキヤマノシタヒはわたしとの約束を守ることは無かった まあ、わたしとしてはそんな約束、どうでもいいことではあったのだが・・ しかし、あのアキヤマシタヒの態度には、腑に落ちないものがあった。 わたしは家に帰ると…

兄のアキヤマシタヒは・・

ハルヤマノカスミの自伝 5 わたしはイズシオトメを嫁にし、彼女はわたしの子を身ごもった。 そんな折、異母兄のアキヤマノシタヒと会う機会があった。 アキヤマシタヒは嫌味っぽく、わたしに話しかけてくる 「おう、ハルヤマ!久しぶりだな! どうだ、イズシ…

藤の花が咲いた!

ハルヤマノカスミの自伝 4 わたしは半信半疑ながら、母上の言う通り、イズシオトメの屋敷に忍び込んだ。そして、藤の蔓でできた弓矢を厠の前にかけたのだ すると・・・どうだろう・・ 信じられないことが起こったのだ! 厠の前にかけた、藤の蔓で作った弓矢…

藤の弦の衣装

ハルヤマノカスミの自伝 3 その日の夕食時、わたしは母上に、その日の異母兄アキヤマノシタヒとの出来事をつぶさに話した。 すると母上は、 「そうですか・・ならば母が一肌脱いでみましょう」 と言った 「母上・・いったい何をされるのですか?」 「ふふ・…

イズシオトメに求婚

ハルヤマノカスミの自伝 2 わたしの元に兄のアキヤマノシタヒが訪ねて来た アキヤノノシタヒは兄と入っても異母兄である。なのでそんなに親しい親交があるわけでもない。 「おう、ハルヤマ!久しぶりだな」 「あれ、兄上?どうなさったのですか、突然」 「あ…

ハルヤマカスミの自伝 プロローグ

ハルヤマカスミの自伝 1 わたしの名はハルヤマカスミ。但馬の国で母と暮らしている。 また、異母兄にアキヤマノシタヒもいる。 ところで、わたしたちが暮らしている但馬には、イズシオトメという、とても美しい娘がいた。それもただの娘ではない。 新羅の国…

難波に入れない・・

アメノヒボコの自伝 8 わたしは瀬戸内海を西に進んでいった もう少しで難波だ・・・難波に行けば、妻に会えるかもしれない・・・ わたしは一縷の望みをもって船を進めていた しかし・・・ 難波の津に入ろうとしたとき、急に風が強くなってきた 海は大荒れと…

難波へ・・・

アメノヒボコの自伝 7 「・・・日本へ・・・行くぞ・・・」 わたしは海岸に出ると、船で海原に乗り出した。たった一人で・・・ 従者は誰もついてこなかった。みな、しりごみして、わたしの命令を聞かなくなってしまったのだ・・ 薄情な奴らがと思ったが、や…

日本へ・・・

アメノヒボコの自伝 6 朝、目覚めると、そこに妻の姿はなかった・・・ わたしは焦った 妻はどこへ行ったのだ・・・ ‥そういえば・・ 昨日、妻は「祖国に帰ります」とか言ってたな・・・まさか・・・ 私はすぐに従者に命じて、妻を探させた。すぐに報告が上が…

女が消えた!?

アメノヒボコの自伝 5 赤い玉は娘の姿となり、わたしの妻となった。 娘は素晴らしい妃となった。わたしによく仕え、一切のわがままなど言わず、わたしの言うことは何でも聞いてくれたのだ ・・・しかし・・・ そんな妻と一緒にいるうちに、わたしの心には慢…

赤い玉は・・・

アメノヒボコの自伝 4 男の話が終わったが、わたしは半信半疑だった・・ しかし、この玉は神秘的な光を放っていた・・ただものではないことは確かなようだ・・ わたしは男を許して解放した。男が持っていた赤い玉は王宮に持ち帰ることにした。 持ち帰った玉…

玉を産んだ少女

アメノヒボコの自伝 3 わたしが捕らえようとしたその男は、懐から赤い玉を取り出した。その真紅の玉は、神々しい光を放っていた。まるで、この世のものではないようだ・・・わたしはその光に魅せられ、あたかも光に誘われ玉の中に引き込まれるような思いだっ…

玉!!

アメノヒボコの自伝 2 わたしは馬の上から男を呼び止めて言った 「おい、お前、どこに行く?」 「へい、わたくしは今から、田畑で仕事している人たちに弁当を作って届けに行くところでございます」 「お前が引いているその牛はどうしたのだ?」 「これは、生…

アメノヒボコの自伝 プロローグ

アメノヒボコの自伝 1 わたしの名はアメノヒボコ。元は朝鮮、新羅国の王子であった。 しかし今は日本に来て、日本で暮らしている。 わたしが新羅国に居た頃のことであった。 わたしは馬に乗って、領内を見回っていた。都を出て、田舎の方に出てきたときのこ…

ホムダワケの帰還

神功皇后の自伝 21 「母上!ただいま戻りました!」 「おお、ホムダワケ・・・大きくなりましたね!こんなに立派になって・・・!」 そう、その日、我が皇子ホムダワケが角鹿(つぬが)から帰ってきたのである。稚児姿だったホムダワケは、それからも成長を…

名の交換

神功皇后の自伝 20 オシクマの反乱も落ち着き、わたしは皇子のホムダワケ、建内宿祢(たけうちすくね)をはじめとする家臣らとともに大和に帰ってきた。 大和の民は、朝鮮を平定して帰ってきた我々を大歓迎で迎えてくれた。 そして十数年の時が経った。ホム…

反乱軍の最期

神功皇后の自伝 19 港に停船していたわたしの元に、建内宿祢(たけうちのすくね)が戻ってきたのは、それからだいぶたってからのことだった。 武内宿祢は戦況をわたしに報告する。それによると・・ 建内宿祢は逃げるオシクマの軍を追って、山代まで追い詰め…

襲ってきたオシクマ

神功皇后の自伝 18 わたしはホムダワケが薨去したという偽りの情報を流し、喪船を大和に向けて筑紫から出港させた。 わたしとホムダワケは、その喪船に乗り込んでいたのである。 喪船は瀬戸内海を順調に航行し、難波の津に入った。そして桟橋に接岸した・・…

不穏なうわさ

神功皇后の自伝 17 わたしは新羅から筑紫に帰還した後、そのまま詞志比宮に滞在して三韓の統治をおこなっていた。しかしその足固めもほぼ終わったので、大和に戻ることになった。 しかし大和に戻ろうとするときのことである。重臣の建内宿祢(たけうちすくね…

いきなり鮎釣り

神功皇后の自伝 16 わたしは三韓の征伐を終えて筑紫に帰り、皇子のホムダワケを出産した。 その後もしばらくわたしは筑紫に滞在していた。産後でもあり、大和への長旅はつらいものがあった。 それに、征服したばかりの三韓についての統治も行わなければなら…

皇子が生まれる

神功皇后の自伝 15 新羅をはじめ、高麗・百済の三国は朝廷の臣下となり、日本の属国となった。 そしてわが艦隊は、日本に帰っていった。 ところでわたしは、先にも申し上げた通り、この時すでに亡き夫の子を懐妊していたのだ。それを、丸い石を帯に巻いて腹…

三韓は日本に

神功皇后の自伝 14 新羅の国王はわたしに降伏の意を示し、わたしの臣下となった。 わたしは重臣の建内宿祢(たけうちすくね)に、降伏文書の調印と朝貢物を受け取りを命じた。建内宿祢は兵士を伴って王宮に入っていった。 数刻の時が過ぎた。建内宿祢が戻っ…

新羅は降伏した

神功皇后の自伝 13 わたしは建内宿祢(たけうちすくね)をはじめ数名の重臣を伴い、兵士に護衛されながら船を降りた。そして、白旗を上げている新羅の国王の元へ、ゆっくり歩いていた。 わたしは新羅国王の前まで来た。 新羅国王は、わたしの前でうつむき、…

新羅の王が・・

神功皇后の自伝 12 我々の艦隊は、魚の起こす波に乗り追い風に押されて、波とともに陸に乗り上げ、丘の上まで進んでいて停まった。 そこは、きらびやかな宮殿だった。天に届くかと思うほど巨大で、そしてまばゆいほどの金銀をちりばめた、この世のものとは思…

艦隊は一気に!!

神功皇后の自伝 11 わたしが率いる艦隊は、和珥浦を出港し快調に進んでいた。 わたしは船上で、わたしに降臨した神が告げた通りに神事を行った。 その神事が終わった直後のことである・・・ すると、にわかに艦隊の周りの海に波が立ちだした・・・海の底から…

航海

神功皇后の自伝 10 出港の準備は整った。 わたしは将兵の前で宣言した 「これより未知の国に遠征します。 敵が少なくても侮ってはなりません!多くても恐れてはなりません! また敵地であっても、婦女への暴行は許しません!また、降伏してきたものを殺して…

産まれそう・・・

神功皇后の自伝 9 遠征の準備は着々と進んでいた。しかし、兵員だけは、なかなか思うように集まらなかった。 まあ、無理もない、全く未知の国に遠征に行くのだ。一般民衆から見れば無謀な計画のように思えるだろう。そうかといって強制的に徴兵したところで…

成功を占う

神功皇后の自伝 8 わたしは詞志比宮に戻ってきた。そこでは船団の準備が進んでいた。 そんなある日、わたしはこの遠征の成否を占うため、宮の前に広がる海まで来ていた。わたしは海岸に立ち、結っていた髪をほどく。そして言った 「我は神々のお告げにより、…

神田を造る

神功皇后の自伝 7 「西の国を攻めよ」というのは、住吉三神のお告げだった。 そのお告げ通り、熊襲征伐はいったん後に回すことにして、西の国に向かうために船団の準備をすることにした。 そして神を祀るため、神田を作ることに決めた。神田には那珂川から水…

住吉三神の降臨

神功皇后の自伝 6 「オキナガタラシヒメさま・・・」 建内宿祢(たけうちすくね)の呼びかける声でわたしは目覚めた。わたしの身体に神が降臨し、神はわたしの口を借りて神告を伝えたのだ。 建内宿祢は、わたしに神のお告げを語ってくれた。 神はわたしに降…