古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

神功皇后の自伝

ホムダワケの帰還

神功皇后の自伝 21 「母上!ただいま戻りました!」 「おお、ホムダワケ・・・大きくなりましたね!こんなに立派になって・・・!」 そう、その日、我が皇子ホムダワケが角鹿(つぬが)から帰ってきたのである。稚児姿だったホムダワケは、それからも成長を…

名の交換

神功皇后の自伝 20 オシクマの反乱も落ち着き、わたしは皇子のホムダワケ、建内宿祢(たけうちすくね)をはじめとする家臣らとともに大和に帰ってきた。 大和の民は、朝鮮を平定して帰ってきた我々を大歓迎で迎えてくれた。 そして十数年の時が経った。ホム…

反乱軍の最期

神功皇后の自伝 19 港に停船していたわたしの元に、建内宿祢(たけうちのすくね)が戻ってきたのは、それからだいぶたってからのことだった。 武内宿祢は戦況をわたしに報告する。それによると・・ 建内宿祢は逃げるオシクマの軍を追って、山代まで追い詰め…

襲ってきたオシクマ

神功皇后の自伝 18 わたしはホムダワケが薨去したという偽りの情報を流し、喪船を大和に向けて筑紫から出港させた。 わたしとホムダワケは、その喪船に乗り込んでいたのである。 喪船は瀬戸内海を順調に航行し、難波の津に入った。そして桟橋に接岸した・・…

不穏なうわさ

神功皇后の自伝 17 わたしは新羅から筑紫に帰還した後、そのまま詞志比宮に滞在して三韓の統治をおこなっていた。しかしその足固めもほぼ終わったので、大和に戻ることになった。 しかし大和に戻ろうとするときのことである。重臣の建内宿祢(たけうちすくね…

いきなり鮎釣り

神功皇后の自伝 16 わたしは三韓の征伐を終えて筑紫に帰り、皇子のホムダワケを出産した。 その後もしばらくわたしは筑紫に滞在していた。産後でもあり、大和への長旅はつらいものがあった。 それに、征服したばかりの三韓についての統治も行わなければなら…

皇子が生まれる

神功皇后の自伝 15 新羅をはじめ、高麗・百済の三国は朝廷の臣下となり、日本の属国となった。 そしてわが艦隊は、日本に帰っていった。 ところでわたしは、先にも申し上げた通り、この時すでに亡き夫の子を懐妊していたのだ。それを、丸い石を帯に巻いて腹…

三韓は日本に

神功皇后の自伝 14 新羅の国王はわたしに降伏の意を示し、わたしの臣下となった。 わたしは重臣の建内宿祢(たけうちすくね)に、降伏文書の調印と朝貢物を受け取りを命じた。建内宿祢は兵士を伴って王宮に入っていった。 数刻の時が過ぎた。建内宿祢が戻っ…

新羅は降伏した

神功皇后の自伝 13 わたしは建内宿祢(たけうちすくね)をはじめ数名の重臣を伴い、兵士に護衛されながら船を降りた。そして、白旗を上げている新羅の国王の元へ、ゆっくり歩いていた。 わたしは新羅国王の前まで来た。 新羅国王は、わたしの前でうつむき、…

艦隊は一気に!!

神功皇后の自伝 11 わたしが率いる艦隊は、和珥浦を出港し快調に進んでいた。 わたしは船上で、わたしに降臨した神が告げた通りに神事を行った。 その神事が終わった直後のことである・・・ すると、にわかに艦隊の周りの海に波が立ちだした・・・海の底から…

産まれそう・・・

神功皇后の自伝 9 遠征の準備は着々と進んでいた。しかし、兵員だけは、なかなか思うように集まらなかった。 まあ、無理もない、全く未知の国に遠征に行くのだ。一般民衆から見れば無謀な計画のように思えるだろう。そうかといって強制的に徴兵したところで…

成功を占う

神功皇后の自伝 8 わたしは詞志比宮に戻ってきた。そこでは船団の準備が進んでいた。 そんなある日、わたしはこの遠征の成否を占うため、宮の前に広がる海まで来ていた。わたしは海岸に立ち、結っていた髪をほどく。そして言った 「我は神々のお告げにより、…

神田を造る

神功皇后の自伝 7 「西の国を攻めよ」というのは、住吉三神のお告げだった。 そのお告げ通り、熊襲征伐はいったん後に回すことにして、西の国に向かうために船団の準備をすることにした。 そして神を祀るため、神田を作ることに決めた。神田には那珂川から水…

住吉三神の降臨

神功皇后の自伝 6 「オキナガタラシヒメさま・・・」 建内宿祢(たけうちすくね)の呼びかける声でわたしは目覚めた。わたしの身体に神が降臨し、神はわたしの口を借りて神告を伝えたのだ。 建内宿祢は、わたしに神のお告げを語ってくれた。 神はわたしに降…

国の穢れを祓え!

神功皇后の自伝 4 夫の天皇が亡くなった・・・わたしが占いをし、神がわたしの身体に降臨している間に・・・ わたしが意識を取り戻し、重臣の建内宿祢(たけうちのすくね)からそれを聞かされた時、驚きとともに言いようのない不安感が襲ってきた・・・ 愛す…

仲哀天皇の崩御

神功皇后の自伝 3 「オキナガタラシヒメさま・・・陛下が・・・天皇陛下が・・・崩御されました!!」 わたしは建内宿祢(たけうちすくね)の言葉に衝撃を受けた! 「え!?・・・タケウチ!それはどういうことです!?」 何しろ夫の天皇は、わたしに神が降…

詞志比宮にて

神功皇后の自伝 2 その年、夫の天皇とわたしは、大和から遠く離れた筑紫の詞志比宮に来ていた。先述の通り、朝廷に反乱を起こした熊襲を討つためである。 大和から詞志比宮についたその夜のことである。 その日、臣下の間で不穏な空気が漂っていた。というの…

神功皇后の自伝 プロローグ

神功皇后の自伝 1 わたしの名前はオキナガタラシヒメ。 父・オキナガスクネと母・カヅラキノタカヌカヒメの間に生まれた。父は第9代開化天皇を祖先に持ち、また母はその祖先をたどると新羅国王のアメノヒホコにたどり着く。 つまりわたしは、日本国天皇と朝…