自分を暗殺しようとしたサホビコを討つべく、天皇は自ら軍勢を率いてサホビコの屋敷に向かっていた。
一方、サホビコにも、天皇暗殺に失敗したとの報は入っていた。すでにサホビコは天皇の軍が攻めてくることを見越していた。サホビコも軍勢を集め、屋敷の周りに稲束を積み上げて防備をかためていたのである。
この時、サホビメは、宮中を抜けだしていた。裏から人目知れず忍び出て、一人サホビコの屋敷に向かっていたのである。
『・・・陛下、申し訳ありません。
陛下を刺そうとした私を、陛下は許してくださいました・・・陛下の御心は何にもたとえようがありません・・・
しかし、兄の誘惑に負けて陛下を指そうとした自分が・・・私は自分が許せないのです・・・
かくなる上は、私は兄のもとに向かい、兄と運命を共にする覚悟でございます・・・』
サホビメはそんな気持ちだった。サホビメは泣きながらサホビコの屋敷にたどり着いた。その時は気力も体力も伝い果たし、倒れ込んで動くこともできなかった。屋敷を警備していた兵士は、サホビメを支えながらサホビコのもとに連れて行った。
サホビコはサホビメを見ると、びっくりして言った。
「サホビメ!どうした!お前、陛下からその罪を許されたというじゃないか・・・宮中に居れば安全なものを、なんだってわざわざこんな危険なところに駆け込んでくるんだ!」
「いいえ、お兄様・・・わたしはお兄様の情にほだされて陛下を刺そうとしました・・・陛下へのお気持ちよりも、お兄様への気持ちのほうが強いからなのです・・・どうか、お兄様、わたしをお兄様のもとに・・・うっ!!」
サホビメは急にその場にうずくまった。その姿を見たサホビコは言った。
「おい、サホビメ!お前、まさか・・・」
そう、この時サホビメは、天皇の御子をみごもっていたのだった。
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