古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

スサノオの自伝

オオクニヌシよ!!

とにかく、逃げたオオナムヂとスセリヒメを追いかけねば!! わたしは髪の毛に結び付いた柱をほどこうとしたが、からまってなかなかほどけない・・・えい!面倒な! わたしは十束の剣(とつかのつるぎ)を手に取ると、それで柱ごと髪の毛を切った。そして柱…

逃げ出した!!

ぐわわ~~ん!! 突如、大きな音がひびいた・・・ ・・・そうだ、わたしはオオナムヂに頭のシラミ・・・いや、ムカデを取ってもらっている最中に眠り込んでしまっていた・・・それにしてもなんだ?この大きな音は?! わたしはすぐに、ガバッと跳ね起きた。…

シラミをとれ!

焼け野原から戻った我々は、宮殿の広間に入って行った。 広間に入るなり、わたしはゴロンと横になった。 向こうの壁のほうを向いてから、オオナムヂに背中越しに言った。 「ああ、オオナムヂ!頭がかゆくてたまらん!頭のシラミをとってくれ!!」 「はい、…

焼け野からオオナムヂが

まだ煙がくすぶる焼け野原の向こうから、ゆっくりと人影が近づいてくる・・・オオナムヂだ。 この大火の中を乗り切ったわけか・・さすがだ。 しかしどうやって、この猛火を逃れたのだろうか・・ オオナムヂはゆっくり近づいてきた。その身体、やけどひとつし…

火に巻かれたオオナムヂは・・・

オオナムヂを野原の真ん中に誘い出し、周囲に火矢を放った。枯れ草は勢い良く燃え上がり、四方は火の壁となってオオナムヂに迫ってくる。さあ、この難局をオオナムヂはどうやって抜け出すか・・・楽しみだ・・・ 翌朝 スセリヒメがわたしのもとに来て言った …

火!!

さて、オオナムヂを蜂と百足の室屋に閉じ込めた翌朝、また昨夜と同じようにスセリヒメにオオナムヂを迎えに行かせた。 「スサノオ様、おはようございます。おかげさまで、昨夜もゆっくり眠れました」 オオナムヂは元気よく挨拶する。それはそうだろう、スセ…

ひれ

その夜、わたしはオオナムヂを「蜂と百足の室屋」に閉じ込めた。その時、宮殿の外に出ていくスセリヒメの姿が目に留まった。いったいどこに行くのだ? わたしはスセリヒメに気づかれないよう気を付けながらあとをつけた。 スセリヒメは、オオナムヂを閉じ込…

スセリヒメが外に

さて、オオナムヂを蛇の室屋に閉じ込めた、翌朝。 さあ、オオナムヂどんな顔をして起きてくるだろうか、まあ奴のことだから死ぬことはなかろうが、蛇に囲まれて一睡もできなかっただろう・・・ 「おーい、スセリ!オオナムヂをここに連れてきなさい」 一刻後…

客間に閉じ込める

わたしはオオナムヂを宮殿の一室に案内し、扉を開けると 「ここがお前が寝る部屋だ、入れ」 と言った。 「はい、ありがとうございます」 オオナムヂは素直に部屋の中に入って行った。 オオナムヂが部屋に入った後・・・ わたしは扉に外から閂をかけた。これ…

オオナムヂを客間に

オオナムヂは、出雲の国からこの根の国に来た事情を話してくれた。 彼はわたしとクシナダヒメの子孫、6代目に当たる。彼には大勢の異母兄がいて、兄弟たちの末っ子だったそうだ。 異母兄たちは、因幡のヤガミヒメのもとに求婚に向かったそうだ。しかしヤガミ…

アシハラシコオ

オオナムヂという若い神が、根の国のわたしのもとに訪ねてきた。 わたしは一目で見抜いた。そいつが普通ではない、とんでもないやつであることを・・・ この若い神は、とてつもない霊力を持っている。その気になれば日本を支配することも簡単にできるだろう…

オオナムヂが訪ねてきた

「父上、お客様だです」 その日、スセリヒメがわたしのところに来て言った。 「なに?客だと?」 わたしは不振に思った。 この根の国には、わたしとスセリヒメしかいないはずだ。それとも、地上の日本から訪ねてきたのか?何のために? 「どんな奴だ?」 「…

根の国に移り住む

私が出雲の国の支配者となり、幾年もの年月が経った。 わたしとクシナダヒメの間には息子のヤジマヌミが生まれていた。そしてわたしはある時、出雲の国の支配をヤジマヌミに譲り、引退したのである。 わたしにはクシナダヒメのほかにも妻がおり、その妻たち…

八雲立つ

おろちはついに、動かなくなった。 わたしは屋敷の戸を開けて言った 「おい、おわったぞ!」 その声にアシナヅチとテナヅチが出てきた。 辺り一面血の海になり、おろちの残骸が小山のように転がっているその光景に息をのむ。 わたしは頭に差した櫛を取ると、…

おろちを制する

わたしは腰に差していた十束の剣を抜くと、おろちのひとつの頭めがけて、飛び降りざまに切りつけた!! ぐああーっ!! 天地が揺れるような、おろちの叫び声が響き渡る。 斬られた頭が大量の血を吹き出しながら転がり落ちていく。 おろちはのたうち回り、残…

おろちに切りつける!

八俣のおろちは、その恐ろしい姿で屋敷に近づいてきた。 そして間近に近づいてきた・・ しかし、屋敷の周りはぐるりと垣根でかこまれている。 ぐうぉーっっ!! 突如、おろちは恐ろしい声を上げたかと思うと、その八つの頭を高く持ち上げた。屋敷を囲む垣根…

おろちが現れた!!

アシナヅチの屋敷は、八つの門がある垣根でぐるりと取り囲まれた。門ごとに強い酒がなみなみ入った酒樽が置かれていた。 「みなさん、ご協力ありがとうございます。まもなく八俣のおろちがやってくるでしょう。みなさんは家に帰り、戸をしっかり締めておいて…

八俣のおろちに備えて

「よし、それでは早速、準備に取り掛かろう」 わたしはクシナダヒメのほうを向くと、ひょいと抱き上げた。そしてクシナダヒメの長い髪にふっと息を吹きかけた。 すると、クシナダヒメは竹の櫛に変わった。私はそれを自分の髪に差した。 これでもう安心だ。ク…

クシナダヒメを嫁に

「そうか、判った。安心して、わたしに任せるがよい! ところで・・・アシナヅチ! クシナダヒメをわたしの嫁にくれないか!!」 八俣のおろちの話を聞いて興奮したわたしは、アシナヅチに申し出た。 アシナヅチははっとわれに返ったように顔を上げ、わたし…

八俣のおろち

わたしは再びアシナヅチに聞いた 「八俣のおろちだと・・・それはいったい、どんな奴なのだ?」 「・・・はい・・・それは・・・口に出すのも恐ろしいほどで・・・」 そういうと、アシナヅチは涙を拭いて・・・そして続ける。 「八俣のおろちというのは、そ…

アシナヅチとテナヅチ、クシナダヒメ

「おい、お前たち・・・どうして泣いている?」 声をかけられた老夫婦と娘は、はっとして顔を上げ、私のほうを振り向いた。 老夫婦は年はとっているが身なりは整っていて上品な顔立ちをしている。また娘もとても美しく、きれいな姿形だった。 しかしその表情…

泣いていた・・

川沿いに上っていくと、そこには小さな村があった。 すでに日は暮れ、静まりかえっている。もう、みな寝ているのだろう。電気がない時代は日没とともに就寝するのが当たり前だった。 そんななか、村の中にぼーっと光る、小さな灯を見つけた。わたしはその灯…

箸が流れてきた

わたしは出雲国に来ていた。 別にあてがあったわけではない。日本の国をさまよい歩き、気が付いたら出雲まで来ていた。 出雲を流れる斐伊川のほとりに、わたしは来ていた。もう日が暮れようとしている。夕闇がわたしの心に重くのしかかる・・・ そう、昔から…

オオゲツヒメを・・・

わたしはオオゲツヒメのもとに行き、食べ物を乞うた。 オオゲツヒメは「待ってなさい、美味しいもの作ってあげる」というと、神殿の奥に入っていった。 いったいどんなものを食べさせてくれるんだろう・・・空腹に耐えかねていたわたしは、オオゲツヒメを追…

オオゲツヒメを訪ねる

わたしは高天原を追われて、地上の日本に降り立った。 わたしの財物はすべて高天原の神によって身ぐるみはがされ、身体一つだけだ。どこに行く当てもない。 わたしは呆然として、さまよい歩いていた。 もう何もかも、考えるのは嫌になっていた。 しかし、そ…

高天原を追放される

わたしのせいで一人の女神が死んだ。姉神アマテラスは天の岩屋にこもり、高天の原も地上の日本も真っ暗になった。日が照らないので作物は育たず、疫病は流行しているという。 これを聞いたとき、さすがに私の心も少し傷んだ・・ちょっとやりすぎたか・・ し…

捕らえられた

わたしは姉神アマテラスと女神たちが機織りをしている小屋に、皮をはいだ馬を投げ込んだ。 それから間もなくして・・・まだ昼間だというのに、突如空が真っ暗になった。どうしたというのだ・・・ その時だった。神殿にいた私のところに、大勢の神々がやって…

機織り小屋に・・

その日、アマテラスは機織り小屋に入っていた。大勢の機織りの女神も一緒だった。 アマテラスと女神たちは、神聖なる神衣を織っていたのだ。 中からはキッコーン、カコーンと、調子よく軽やかに、機織り機の音が響いてくる。 わたしはその機織り小屋に、そー…

高天原で・・・

わたしは姉アマテラスとのうけいで美しくしとやかな女神を産み、わたしの潔白は証明された。 姉が統治する高天原を乗っ取る気は無いと、アマテラスにわかってもらえたのだ。 気をよくしたわたしは、しばらくこの高天原に滞在することにした。 高天原は地上の…

潔白が証明された

わたしと姉アマテラスは、こうして天の安河をはさんで子を産んだ。 わたしがアマテラスにわたした剣からは三人の女神が産まれ、アマテラスから私にわたされた勾玉からは五人の男神が産まれた。 わたしは「しめた!」と思った。 剣はわたしのものであった。そ…