古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

言葉を話さないホムチワケ

野見宿祢の自伝 14 サホビコの反乱から十数年の時が経った。 陛下はサホビメさまの後、后とされたヒバスヒメさまと一緒に過ごされていた。陛下はサホビメさまと同じように、いやそれ以上にヒバスヒメさまを寵愛されていた。 そして、サホビメさまの忘れ形見…

悲劇、再び・・

野見宿祢の自伝 13 サホビコの反乱は、陛下が率いる皇軍によって鎮圧された。 しかし、同時に陛下が寵愛していた后のサホビメさまも亡くなってしまった。 陛下のお悲しみは、見ていてもお気の毒なほどであった。表向きは公務に精を出していたが、その陰でサ…

最期

野見宿祢の自伝 12 サホビメさまは後ろを振り向き、屋敷の中に入ろうとされていた. 陛下は慌てて叫ぶ 「待て!サホビメ!これを見ろ!お前との固い絆を誓って結んだ衣の紐だ!これをお前以外の、誰がほどくというのだ!!」 しかしサホビメさまは陛下に背を…

御子の名前は

野見宿祢の自伝 11 「サホビメ!聞こえるか!! 余の声が聞こえたら、門の外に出てきてくれ!!」 陛下はサホビコの屋敷に向かって叫ぶ。 ・・・どのくらいの時が立っただろうか・・・ サホビコの屋敷の門が開いた。そして出てきたのだ・・・サホビメさまが…

天皇の叫び

野見宿祢の自伝 10 サホビメさまを奪還する作戦は失敗に終わった。陛下の落胆は、見るに忍びないほどだった。 陛下は茫然とされていた・・・ ・・・しかし、陛下の心中は察するに余りあるが、そうかといって陛下がこのご様子では兵の士気にもかかわる・・・ …

サホビメ奪還なるか?

野見宿祢の自伝 9 サホビコの屋敷の扉が開いて、サホビメさまが出てきた。赤子を抱いている。 サホビメさまは仰せになる。 「陛下・・・陛下の御子でございます。どうぞ、お引き取りくださいませ」 そこで、陛下は選抜した兵士に「行け!」と命令される。 こ…

サホビメを連れてこい!

野見宿祢の自伝 8 皇軍はサホビコの屋敷を取り囲んだが、それ以上動けず膠着状態に陥っていた。屋敷の中には陛下が寵愛するサホビメさまがおり、サホビメさまは陛下の御子を懐妊している。うかつには踏み込めない。 そのまま時だけが過ぎた。 そんな時、サホ…

サホビメが懐妊!

野見宿祢の自伝 7 陛下は自ら皇軍を率いてサホビコの屋敷まで進軍された。わたしも陛下のおそばについて馬を進めていった。 サホビコの屋敷まで進軍すると、皇軍はぐるりと屋敷を取り囲む。屋敷はうずたかく稲束が積み上げられて固く守られている。 そして屋…

サホビメがいない!

野見宿祢の自伝 6 わたしは陛下からサホビコ追討のため軍勢の招集を命令された。 さっそくわたしは各所に指示を出し、兵士を集め軍備を整えさせた。それが終わると、陛下のもとに報告に行った。 「陛下、出陣の準備が整いました」 「うむ、ご苦労。それでは…

サホビメと天皇の夢

野見宿祢の自伝 5 陛下はその日の出来事をわたしに話された。 その話によると、陛下は激務でお疲れになっていた。そして、お后であるサホビメ様の膝枕で、お昼寝をされていたという。 その時、夢を見たそうだ。 その夢はというと、サホビメさまの出身地であ…

サホビコを討伐

野見宿祢の自伝 4 わたしとケハヤとの天覧相撲から数か月がたった。 天覧相撲のあと、わたしは出雲に戻ることなく、そのまま大和にとどまり陛下に仕えていた。出雲の祭祀と政務は、わたしの息子のキイサツミが引き継いでやってくれている。 ある日の午後、わ…

相撲を取る

野見宿祢の自伝 3 出雲から大和に上ってきた翌日。 宮殿の近くに、わたしとケハヤとの相撲の取り組みのため、土俵が作られていた。土俵のわきには陛下が着座されており、わたしとケハヤは陛下の侍従に従って陛下の御前に進み出た。 「ノミにケハヤ、ご苦労で…

垂仁天皇に拝謁

野見宿祢の自伝 2 わたしは大和に着くと、さっそく宮中に参上した。そして陛下の御前に通されたのだ。陛下の御名はイクメイリヒコ(垂仁天皇)、初代神武天皇から続く第11代目の天皇(すめらみこと)である。 「出雲のノミ、おもてを上げるがよい」 陛下の凛…

野見宿祢の自伝 プロローグ

野見宿祢の自伝 1 わたしの名はノミ。出雲国に生まれた。 わたしの家系は代々、出雲国造を務めている。その祖をたどると、アマテラス大御神の次男、ホヒにたどり着く。 はるかな悠久の神代の昔、ホヒは高天原から出雲国に降臨し、オオクニヌシの大神のもと初…

お知らせ

拙ブログをいつもご覧いただきありがとうございます。 しばらくお休みをいただいていた「古事記の話」ですが、明日5月14日から再開します。 第11代垂仁天皇の御代を、相撲の祖とされる野見宿祢の語りで綴っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。…

策略を用いて

オオビコの自伝 外伝3(タケヌナカワの自伝) 皇軍はヤサカシとヤツクシの護る砦をなかなか落とすことができなかった。逆に神出鬼没の奇襲攻撃を受け、わが軍の消耗は日に日に激しくなってきた。なんとかせねば・・・ そこで、わたしは策略を使って敵を落と…

砦を攻撃する

オオビコの自伝 外伝2(タケヌナカワの自伝) わたしは誓約(うけい)を行い、煙が流れて言った方向で、海の対岸の部族が朝敵か否か占おうとした。 その煙はというと・・・海のかなた、東の大海のほうに流れていった。 ・・・対岸の部族は朝敵だった。朝敵と…

味方か、敵か

オオビコの自伝 外伝1(タケヌナカワの自伝) わたしの名はタケヌナカワ。 第10代の天皇(すめらみこと)である今上天皇陛下の命を受けて、皇軍を率いて東海道を進軍してきた。 陛下はまだ朝廷に服していない部族を平定するため、四方に軍を派遣したのだ。わ…

進軍

オオビコの自伝 13 タケハニヤスを討ったわたしは、都に戻り、その旨陛下に奏上した。 そして改めて、当初の命令通り北陸道の平定のため、古志の国のほうへ進軍したのだった。 北陸道の平定は順調に進んでいった。 もちろん、反抗的な部族に対しては武力で制…

敵を殲滅

オオビコの自伝 12 ヒコクニブクが射った矢は、軍の後方にいたタケハニヤスに当たった。タケハニヤスは急所を貫かれて即死したのだった。 司令官が射殺されてしまったので、敵軍は混乱に陥ってしまった。 わたしは鏑矢(かぶらや)を空に向かって射った。そ…

タケハニヤスの矢

オオビコの自伝 11 わたしはタケハニヤスを討つため、山代の国に進軍していた。 そして山代の国に入り、和訶羅川に至った時だった。川の向こうに軍勢が見えた・・・タケハニヤスの軍勢だ。 今まさに大和の都に攻め込もうとしているところだったようだ。 危な…

歌の意味は・・・

オオビコの自伝 10 「陛下!」 わたしは大和の都に戻ると、とる物もとりあえず陛下の御前に駆け付けた。 「オオビコ、どうしたのだ?!そんなに大慌て戻ってきて、何があったのだ?」 陛下は当惑した顔で仰せになった。 わたしは陛下のお顔を拝して、少し安…

弊羅坂にて

オオビコの自伝 9 わたしはまだ朝廷に服属していない部族を平定するため、北陸道に派遣されることになった。 わたしは軍勢を率いて、北陸のほうに出発した。 わたしの率いる大軍が大和の平原を出て山代の国に入り、幣羅坂(へらさか)に差し掛かった時のこと…

四道将軍

オオビコの自伝 8 疫病が鎮まってから時がたった。 ある日、わたしは陛下の命により、御前に召された。 わたしだけではなかった。息子のタケヌナカワも一緒に召されたのだ。我ら親子は何事かと陛下の宮殿に向かった。 すると、宮殿にはヒコイマスとキビツヒ…

ヤマトトモモソヒメ

オオビコの自伝 7 「オオモノヌシと言えば、ヤマトトモモソヒメも絡んでいたな・・」 陛下が言われる。 ヤマトトモモソヒメと言えば、陛下の先々代、第8代孝元天皇の異母妹である。すなわち陛下から見れば大叔母、わたしから見れば叔母である。 「さようでご…

三輪山の神

オオビコの自伝 6 国を襲っていた疫病は収まり、日本の国は平安な日々を送っていた。 そんなある日、陛下は疫病を鎮めるのに功績があったオオタタネコを呼び出した。 「オオタタネコ、ご苦労だった。おかげで疫病も鎮まり、国民は穏やかに日々を過ごしている…

神を祀る

オオビコの自伝 5 疫病を鎮めるため、オタタネコを神官としてオオモノヌシの大神を祀ることになった。 オオタタネコはオオモノヌシの大神が鎮座される三輪山に詰め、日夜オオモノヌシの大神に祈り、拝み祭っていた。 ちょうどそのころ、神牀(かむどこ)に寝…

美努村にいた!

オオビコの自伝 4 わたしは陛下の命に従い、四方に調査隊を派遣してオオタタネコという人物を探させた。 そしてほどなく報告が入ってきた。河内の美努村(みのむら)にオオタタネコという人物が見つかたというのである。 わたしはさっそく、陛下の名において…

神牀の夢

オオビコの自伝 3 わたしが仕える天皇陛下は、神牀(かむどこ)で見た夢について話し始めた。 陛下は夢の中で、とある場所の海岸に立っていた。すると海のかなたから、光り輝く神が姿を現し、だんだん近づいてきて浜辺に立つ陛下のそばまで来たそうだ。 「あ…

オオタタネコを探せ

オオビコの自伝 2 ある日、わたしは天皇陛下に呼ばれ、宮中に参上した。 そして陛下から 「オオビコ、人を探し出してほしい。オオタタネコという名の人物だ」 と告げられた。 「・・・オオタタネコ・・・ですか?」 「ああ、そいつが今はやっている疫病を鎮…