古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

剣を受け取る

神武天皇の自伝 16 ・・・・・・・・・・ ・・・いったい、どうしたというのだ・・・・ ・・・・そうだ・・・わたしは熊に襲われ、兵士もろとも気を失ったんだった・・・ ・・・・と・・・すると・・・ 「え、こうして寝ている場合じゃないぞ!!」 わたしは…

熊との遭遇

神武天皇の自伝 15 嵐に流されて上陸した皇軍は、陸路、大和を目指していく。 しかしそれは険しい山道だった。これまで艦船を自由に操ってきた我々は、今までとは全く違った苦しい道のりを進んでいた。 時には背の高い草をかき分け、時には切り立った崖沿い…

嵐に遭遇

神武天皇の自伝 14 熊野の神邑(みわむら)を出港してしばらくのことだった。 それまで順調な航海が続いていたが、にわかに雲行きが怪しくなり始めた。空の色が暗くなったかと思うと、風が吹き始め、だんだん強くなる。雨も降り始めた。 そして見る見るうち…

神に祈る

神武天皇の自伝 13 名草村でナグサトベを誅殺した後、わたしは艦隊を出港させて、紀国の沿岸を南に進んでいた。 紀国の南端を越えて、今度は沿岸に沿って針路を北にとり、狭野(さの)にいったん上陸した。そこでいったん休憩を取り、さらに艦隊を進める。 …

ナグサトベの攻撃

神武天皇の自伝 12 兄イツセを亡くしたわたしは、竃山にイツセを葬った後、軍勢を率いて港に停泊している艦船に戻っていた。 そこへ、見回りの兵士が駆けつけてきた。 「イワレさま!また軍勢が攻めてきてます!」 「なんだと?!」 一体、どこの軍が攻めて…

イツセを葬る

神武天皇の自伝 11 「ああ、わたしはあんな卑しい奴の手傷を受けて死ぬのか!!」 それっきりだった・・・その雄たけびを最後に、兄イツセは息をしなくなってしまった・・・ 「兄上~~!!」 わたしは混乱していた。イツセとの、生前の記憶が頭をめぐる・・…

イツセの雄たけび

神武天皇の自伝 10 ナガスネビコの軍勢に奇襲を受けた我々は、命からがら船に戻り、艦隊を出港させた。 この戦いで兄イツセは腕に敵軍の矢を受けていた。 「兄上、しっかり」 わたしは矢を抜き、イツセの傷の手当てをするが、しかし出血が多い。大丈夫だろう…

白肩津に上陸するが・・

神武天皇の自伝 9 こうしてサオネツヒコの案内で、潮の流れのはやい速吸門を艦隊は無事に通り抜けていった。 艦隊はさらに東に進み、浪速の岬から河内の湖に入っていった。艦隊は河内の湖の奥、白肩津に停泊した。 ここからは陸路となる。我々はここから東側…

亀に乗った男

神武天皇の自伝 8 我々は高島宮を出港し、東に向かっていた。 風は順調、追い風の乗って艦隊は進んでいた。 そんなあるとき・・・ 「イツセさま、イワレさま、あれをご覧ください」 従者が船の進む先を指さす。その指した指の先には・・・ 大きな亀がいた・…

吉備に滞在

神武天皇の自伝 7 我々の艦隊は安芸の国を出港し、瀬戸内海を西に進んでいた。 そして吉備の国に至り、ここに上陸した。 われわれはここでも歓迎を受け、吉備の国人が用意してくれた高島宮に滞在することになった。 我々が宮に入った翌日、この地の長老が我…

安芸に滞在

神武天皇の自伝 6 岡田宮を出港した艦隊は、瀬戸内海を西へ西へと進んでいく。 そして安芸の国に入った。補給のため、我々は安芸の国に上陸した。 そこは深い森だった・・・既に一日も終わろうとしていて日も暮れかけ、あたりは薄暗くなっている。 薄暗い中…

岡田宮に滞在

神武天皇の自伝 5 宇佐を出港した我々の艦隊は、そのまま九州の東岸を北上し、筑紫の国に入った。ここは瀬戸内と玄界灘の境にある海上交通の要所である。 我々は休養・補給とともに、東征への足掛かりとしてこの地を抑えておこうと考えていた。 そこは豪族の…

宇佐に上陸

神武天皇の自伝 4 日向の美々津を出港した我々は、九州の沿岸沿いに北上していった。順調に艦隊は進み、豊国(とよのくに)の宇佐に至った。 我々は補給と休憩のために宇佐の港に入港した。 宇佐の港に入港した我々は大歓迎を受けた。そしてこの土地を支配す…

出港

神武天皇の自伝 3 その年の10月のある日、わたしと兄イツセの兄弟と、わたしたちの従者側近、それに高千穂宮の軍勢が日向の美々津港に集まった。これから日向から東国に遷都すべく、艦隊を組んで出港し海を東に向かう。 出港の前日、我々は港のそばに航海の…

ゴー・イースト

神武天皇の自伝 2 その日もわたしは高千穂宮で、兄イツセと政務について話し合っていた。 その時、イツセが言った。 「最近、日本の国で、我々の命令が届かないことが増えてきたな・・・」 わたしは答えていった。 「そうですね・・・東国では高千穂宮の目…

神武天皇の自伝 プロローグ

神武天皇の自伝 1 わたしの名はイワレ。日向の国、高千穂宮で生まれた。 わたしの父はウガヤフキアエズ。日の神アマテラスの子孫である。 日向の地に降臨した天孫二ニギから数えて三代目となる。 わたしから見て曽祖父となる二ニギの代から、祖父ホオリ、父…

4人の男児

山幸彦の自伝 28 わが后、トヨタマヒメが海に帰り、はや十数年。 トヨタマヒメは、わたしたちの子ウガヤフキアエズの養育のために妹のタマヨリヒメを送っていた。ウガヤフキアエズはタマヨリヒメの献身的な養育により、今では立派な青年に成長していた。 わ…

ああ、トヨタマヒメ・・・

山幸彦の自伝 27 トヨタマヒメが海に帰り、早数年の時が立った。 トヨタマヒメが残していった子は、ウガヤフキアエズと名付けた。ウガヤフキアエズはすくすくと育っていった。それというのも・・・ トヨタマヒメが自分の妹、タマヨリヒメを、子の養育のため…

別れ

山幸彦の自伝 26 トヨタマヒメが赤子を抱いて立っていた。 「トヨタマ、生まれたのか」 トヨタマヒメの正体を見てしまったわたしは、努めて平静を装っていった。 「ホオリさま・・・天の御子、あなたの子です・・・」 トヨタマヒメはそっと赤子を差し出した…

赤子を抱いて・・

山幸彦の自伝 25 産屋の中にいたのは・・・ワニだった! ワニがのたうち回って、子を産んでいたのだ! わたしはびっくりし、そして思わず一歩退き・・・ その時、足元の小石に足が当たり、カタッと小さな音を立ててしまった・・ ・・・しまった!・・・いや…

産屋の中にいたのは・・・

山幸彦の自伝 24 トヨタマヒメは出産のために産屋にこもった。その時、中を覗くなといった・・・どういうことなのだろう・・・気になる・・・ ・・・元の姿、ってなんだ・・・海神の宮殿で3年間を過ごした、あのきれいな姫の姿は仮の姿だったっていうのか・…

見るな

山幸彦の自伝 23 トヨタマヒメの出産に備えて、海のそばに産屋を建てることにした。 さっそくトヨタマヒメが上陸していた海岸に柱を立てていく。トヨタマヒメの出産も近い。 屋根と壁を葺いていくにあたって、陸上から萱を取ってくるより、手っ取り早く海岸…

トヨタマヒメが訪ねてきた

山幸彦の自伝 22 兄ホデリが去っていったあと、わたしは高千穂宮に戻っていた。 高千穂宮に戻ってしばらくしてからのことだった。わたしが執務を取っていると、従者が入ってきた。 「ホオリさま、若い女性の方が面会を求めておられます」 「ん?若い女性・・…

ホデリは降伏した

山幸彦の自伝 21 わたしが頭上に塩満珠を掲げると、海から大きな波が押し寄せ、兄ホデリの軍勢を押し流していく。 わたしの従者らは、屋根の上からあっけにとられてこの光景を見ていた。ホデリの兵士たちは次々と波にのまれていく。 「うわああっ」 「助けて…

津波!!

山幸彦の自伝 20 兄ホデリがわたしの宮に攻撃を仕掛けてきた。わたしと従者は屋根の上に上がり、わたしを中心に従者が周りを取り囲み、戸板で作った急ごしらえの盾で護る。 そうこうしているうちにも、ホデリの軍勢は私の宮の目の前まで進軍していた。先頭に…

屋根に上がれ!

山幸彦の自伝 19 兄ホデリがわたしの宮に攻撃を仕掛けてきた。 「ホオリさま!兄君の軍が攻めてきています!!」 宮の周りを警護していた従者から、その第一報はもたらされた。従者たちの間で動揺が走る。 ホデリは没落したといっても、高千穂宮の大軍を手中…

田を開けば・・・

山幸彦の自伝 18 わたしは高千穂宮を出て、海神の宮殿から帰ってきたときに上陸した海岸に新たに宮を建て、そこに拠点を移すことにした。 その頃の施政者にとって、新田開発は重要な課題だった。田が広がり米が多く取れれば、それだけ国力も強くなり支配力も…

釣れない魚

山幸彦の自伝 17 釣りに出掛けた兄ホデリが帰ってきた。しかし、その顔は明らかに不機嫌だ。魚が釣れなかったのだろうか。 「兄上、どうしたのですか」 「どうしたもこうしたも、一匹の魚も釣れやしない。おかしい、こんなこと、初めてだ・・・お前、針を返…

針を返す

山幸彦の自伝 16 3年ぶりに日向に帰ったわたしは、高千穂宮に戻っていった。 「兄上、ただいま帰りました」 「ん、ホオリか?お前、この3年の間、どこに行ってたんだ?お前がいない間、わたしは一人で政務を見ていたんだぞ! ・・・それで・・肝心の針は、…

日本に帰る

山幸彦の自伝 15 わたしは海神の宮殿から地上の日本に戻ることになった。 海神は今度はワニを集めると 「天の御子が地上にお戻りになることになった。お前ら、地上まで何日でお送りすることができるか」 と問うた。 すると、集まったワニの中で一尋ワニ(ひ…