古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオクメの眼

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天皇はオオクメとともに、イスケヨリヒメが住む高佐士野に来ていた。

 

するとそこに、少女が7人、連れ立って歩いてきた。

そこでオオクメは天皇に言った。

「あの中にイスケヨリヒメがおります。どなたかお分かりですか?

「先頭を行く、背の高い美しい娘ではないか?」

その娘に神の御子らしい気高い品位を感じた天皇は答えた。

 

「さすがイワレさま、その通りにございます」

「よし、ならばオオクメ、わたしの妃になってほしいと、姫に伝えてきてくれ」

「え・・・私が・・でございますか?イワレさまが直接伝えたほうが良いのでは?ご先祖のニニギさまも正面からコノハナサクヤビメ様に申し上げたといいますよ」

「まあ、そういわずに、オオクメ、頼むよ・・な・・」

 

そう言われて、オオクメは仕方なく天皇の意を伝えることにした。

 

日向からイワレの軍勢を率いてきたオオクメ、根っからの武人である。もともといかつい顔のところに、軍勢を把ねるしるしとして刺青を入れている。

その表情はまさに恐ろしげで普通の人は顔見ただけで逃げ出すほどであった。

 

・・・こんな顔で娘に会えなんて、イワレさまはいったい何考えてるんだ・・・そう考えながら、オオクメはしぶしぶ娘たちに近づいていった。

 

果たしてオオクメが近づくと、少女たちは悲鳴を上げ、腰を抜かしたり逃げ出したりする有様であった。

しかしイケスヨリヒメだけはさすが神の御子、平然としていた。

 

イケスヨリヒメが先に言った。

「その鳥の目のような鋭い刺青・・・なぜそんな目をしているのですか?」

 

意外な展開にオオクメはあっけにとられたが、すぐに返して言った

「美しいあなたをよく見るために、私の目は大きく見開いているのです」

 

こうして姫と打ち解けたオオクメは、天皇の意向を姫に伝えた。

 

姫は「謹んでお仕え申し上げます」と答え、日本で最初の皇后となった。

 

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☆皇后イスケヨリヒメ

 

古事記の記述では、本名は比売多々良伊須気余理比売命(ヒメタタライスケヨリヒメノミコト)と言います。もともとは「富登多々良伊須気余理比売命(ホトタタライスケヨリヒメノミコト)という名前だったのが、ホトという言葉を嫌って改名したと記載されています。

ホトというのは女陰のこと・・・そりゃーそんな名前いやでしょうね・・

 

日本書紀では媛蹈鞴五十鈴媛命ヒメタタライスズヒメノミコト)という名前で出ております。日本書紀のほうが正史とされていますので、神武天皇の皇后は正式にはヒメタタライスズヒメということになっています。

 

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