戦いはイワレの勝利だった。
イワレは飛び去っていく金の鵄に向かって言った
「アマテラス大御神は、しっかり我々のことを見守ってくれていたんだ・・・ありがとうございます」
そこに、イワレの兵につれられて、敵軍の将であるナガスネビコがイワレの前に引き出された。イワレにとっては兄イツセの仇である。
イワレはナガスネビコに向かって言う。
「お前がナガスネビコか・・・わが兄、天の御子であるイツセに弓を引き射殺したお前の罪は重い・・・思い知るがよい」
イワレは剣を振り上げた。
その時、ナガスネビコが口を開いた。
「お待ちください!あなた様は天の御子だと言われますが、何を根拠にそのようなことを言われるのですか?」
「なに?私が天の御子ではないとでもいうのか?」
「はい、私がお仕え奉るニギハヤヒ様こそが天の御子でございます」
「なんだと・・・」
イワレはナガスネビコの意外な話に言葉を失った。
ナガスネビコは言葉をつづける。
「ニギハヤヒ様は昔、天磐船(アマノイワフネ)に乗って高天原より降臨されました。私の妹はニギハヤヒ様に嫁いでおり、それゆえわたしはニギハヤヒ様を君として奉じております。天の御子が世の中に二人もいるはずありません」
「ならば、お前が仰ぎ使えるニギハヤヒが天の御子だという証拠はあるのか?」
「はい、ここに、ニギハヤヒ様から預かった矢と武具がございます。ニギハヤヒ様が降臨される前に、天の御子の証としてアマテラス大御神より賜ったものでございます。」
ナガスネビコは、矢と武具を取り出して見せた。
それを見て、イワレは言った。
「本物だ・・・」
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☆ナガスネビコ
このイワレとナガスネビコの会話のやり取りも、古事記にはなく、日本書紀に収録されている話をもとに再構成しています。
ナガスネビコは別名トミビコと言います。現在奈良市には「鳥見」や「富雄」の地名が残ってますが、この辺りを本拠地とする豪族だったのかもしれません。