サホビメは宮中を抜けだし、サホビコの屋敷へ入っていった。
その報は、サホビコの屋敷に向けて進軍していた天皇にも入った。
「なに・・・サホビメが屋敷の中に・・・子供もみごもっているだと・・・」
天皇は困惑した。
兄サホビコは天皇を暗殺しようとした暗殺者である。許すわけにはいかない。
しかし、サホビメは天皇の后となってもう3年になる。しかも自分の子をみごもっているともなれば、その情は何とも代えがたい。
軍勢はサホビメの屋敷を取り囲みはしたが、天皇はサホビコの屋敷を攻めることはできなかった。そのまま両軍がにらみ合う膠着状態となった。
そうこうしているうち、サホビメは天皇の御子を出産してしまった。
天皇のもとに、サホビコの屋敷から使者がやってきた。サホビメが遣わしたものだった。
「御子が産まれました。この御子を陛下の子として愛しく思うのであれば、どうぞ御子を陛下のもとに迎え入れてくださいまし」
使者はサホビメからのメッセージを伝えると、屋敷に戻っていった。
天皇は
「反逆者の兄は許すことはできない。しかし后と子を愛しく思う気持ちは変わらない」
と言って、一刻後に御子を迎え入れるのでサホビメ自ら抱いて屋敷の外に出てきてほしい、と使者を出した。
天皇は御子と一緒にサホビメも取り戻そうという魂胆だったのである。
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