神武天皇と皇后イスケヨリヒメの間には3人の男児が産まれた。上からヒコヤイミミ、カムヤイミミ、カムヌナカワと名付けられた。
さて、天皇がまだ日向にいた時代に結婚してタギシミミという子が産まれていた。
そしてタギシミミは天皇が即位した後、天皇を追って日向から大和に来ていた。
時は流れ、天皇は崩御した。その後、タギシミミはとても美しい皇太后イスケヨリヒメを自分の嫁として迎え入れてしまった。それだけではない、天皇とイスケヨリヒメとの間に生まれた三人の御子を亡き者にし、自分が次の皇位につこうと考えたのである。
これを知ったイスケヨリヒメ、そんなことをさせるわけにはいかない。すぐにイスケヨリヒメは三人の御子のもとに出向いた。
その時、イスケヨリヒメには侍女が付き従っていた。いや、侍女とは名ばかりで、実はタギシミミの息のかかった配下の女だった。イスケヨリヒメがおかしな行動をしないよう見張っていたのである。
これではタギシミミが反逆しようとしていることを自分の御子たちに伝えることができない・・・
そこで三人の御子の前に出ると、外の風景を見ながらつぶやいた。
「狭井川から雲が立ち上がり、畝傍山では木の葉がざわざわなっていますね・・おそらく風が吹こうとしているのかもしれません」
イスケヨリヒメの作戦はうまくいった。侍女にはその意味は分からなかった。
しかし三人の御子たちは、イスケヨリヒメの言葉に隠された意味を読み取った。
イスケヨリヒメの住居の近くを流れる狭井川のほうから不吉なことが起こり、それが皇居がある畝傍山のほうに流れてきています・・・と。
御子たちはすぐにタギシミミのことだと直感した。
前<<< オオクメの眼 - 古事記の話
次>>> 二代目天皇の即位 - 古事記の話
古事記上巻 日本神話 目次
古事記中巻 神武天皇~応神天皇 目次