古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

日向からの東征、終わる

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イワレはナガスネビコに向かって言った。

「お前が見せたものに偽りはない。確かにお前が君と仰ぐニギハヤヒは天の御子のようだ。だが、私も天の御子なのだ」

 

そういってイワレも、自身がアマテラスから代々受け継いだ矢と武具を、ナガスネビコに見せた。

それを見たナガスネビコは、イワレの前にひれ伏して言った

「恐れ入りました。確かにあなた様も天の御子でございます」

 

それを見たイワレは、もはや兄の仇であることは心の隅から流れてしまった。むしろ、高天原から降りてきた神を自分と同じ天の御子と仰ぐ姿に、親しみさえ感じてしまった。

 

しかし、顔を上げたナガスネビコは言った。

「あなた様が天の御子だということはわかりました。しかし、私が天の御子と仰ぐ君はニギハヤヒ様ただ一人でございます」

 

そういって立ち上がったかと思うと、脱兎のごとく駆け出し、イワレの兵を振り切って逃げだしてしまった。

イワレの兵は慌ててナガスネビコを追おうとしたが、イワレは

「もういい、追うな。どうせ奴には反撃する力は残っておらん」

悲しい顔でそういうと、そっと顔を伏せた。

 

その日の夕刻、ニギハヤヒがイワレの前に現れた

「恐れ多くもアマテラス大御神の御子に、配下のナガスネビコが大変な御無礼を申し上げました。深くお詫びいたします。」

 

イワレはニギハヤヒに向かってやさしい表情で言った

「いや、もうよい。兄イツセの魂もこれで浮かばれるだろう。もう何の恨みもない、ナガスネビコは許してやれ」

「いえ、それが・・・ナガスネビコはあくまでも天下を治めるのは私だと主張し、機を見てイワレさまを攻めるべきだと言いました。ナガスネビコは忠義心に厚く一途な性格なのですが、一度言い出した自分の信念は決して曲げません。このままではアマテラス大御神の御子であるイワレさまに、いつかきっと反乱を起こします。それで・・・やむなくナガスネビコは私の手で斬りました」

 

「そうか・・・」イワレは悲しそうに眼を閉じた。

 

イワレの東征はこうして終わりを迎えた。

 

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ニギハヤヒ

 

古事記では神武東征の最後にいきなり、何の脈絡もなく「天の御子を追って降りてきた」と現れます。ぼくが高校生のころ、初めて古事記の原文(読み下し文)を読んだとき、あまりもの唐突感を感じたものです。ナガスネビコとの戦いの結果も未消化で、よく理解できませんでした。

その後年月が経ち、日本書紀を読んで、そういう流れだったんだ~と判りました。

 

ニギハヤヒはイワレがナガスネビコと最初に戦った白肩の津の近く、石切剣箭神社に祀られています。

 

石切剣箭神社 - Wikipedia

 

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