古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

神武天皇の自伝

二代目天皇の即位

神武天皇の自伝 番外編 4(カムヤイミミの自伝) わたしは弟のカムヌナカワミミと二人、タギシミミを討つべく白檮原宮(かしはらのみや)に忍び込んだ。 見張りの目をかいくぐり、タギシミミが寝ている寝室の前まで来た。 「よし、カムヌナカワミミ、いくぞ…

タギシミミを殺る!

神武天皇の自伝 番外編 3 (カムヤイミミの自伝) 母は帰っていった。後に我々3兄弟が残された。 わたしたちは張り詰めた顔で互いを見合わせていた。 最初に口を開いたのは兄ヒコヤイだった 「やばいぞ・・・このままぐずぐずしてたらタギシミミに殺される…

風が吹き来る、木の葉が騒ぐ

神武天皇の自伝 番外編 2 (カムヤイミミの自伝) その当時、わたしは兄ヒコヤイ、弟カムヌナカワとともに大和の平原の一角に宮を構えて暮らしていた。 その時、母イスケヨリヒメが侍女を連れて我々3兄弟の宮を訪ねてきたのである。 母は大変やつれて見えた…

イワレとタギシミミ

神武天皇の自伝 番外編 1(カムヤイミミの自伝) わたしの名はカムヤイミミ。大和の地に生まれた。 わたしは3兄弟の次男である。兄の名はヒコヤイ、弟の名はカムヌナカワミミという。 そしてわたしの父は天皇(すめらみこと)のイワレである。 父はアマテラ…

山百合の屋敷で

神武天皇の自伝 36 わたしはイスケヨリヒメを后として迎えることになった。 イスケヨリヒメと出会ったその日、わたしは狭井川の上流にあるイスケヨリヒメの家を訪ね、そこで彼女と一夜を過ごした。 イスケヨリヒメの家の周りには山百合がたくさん茂り、きれ…

皇后イスケヨリヒメ

神武天皇の自伝 35 オオクメは7人の娘のもとにゆっくり近寄っていった。わたしは遠目にその様子を見ていた。 オオクメは根っからの武人である。もともと恐ろしげな顔の上にその顔面には刺青を入れ、目の周りにはまるで相手を脅すように真っ黒な墨を入れてあ…

イスケヨリヒメは誰?

神武天皇の自伝 34 わたしはオオクメに連れられて高佐士野まで来ていた。 そこに7人の娘が連れ立って歩いてくるのが見えた。 オオクメが言った 「イワレさま、あそこに7人連れ立ってくる娘のひとりがイスケヨリヒメです。誰かわかりますか?」 わたしは7人…

神の御子

神武天皇の自伝 33 日向からナガスネビコを破って大和に入ったわたしは、畝火(うねび)に白檮原宮(かしわらのみや)を造営し天皇(すめらみこと)に即位した。 さて、即位後のあわただしさも落ち着いてきたある日、わたしは后となる娘を探していた。 もと…

八紘一宇 ~日本の建国~

神武天皇の自伝 32 わたしはこうして各地で荒ぶる神を平定し、大和に入った。 大和の民は、我々を大歓迎してくれた。 大和に入ったわたしは、ここまでついてきてくれた側近従者、将兵たちの前で宣言した。 「わたしは日向を発って以来、東の国を目指して進ん…

東征、終わる

神武天皇の自伝 31 ナガスネビコとの戦いの翌日、ニギハヤヒがわたしのもとを訪ねてきた。高天原から天磐船で降りてきたという天つ神である。 「配下のナガスネビコが、こともあろうにアマテラス大御神の御子に対して、大変なご無礼を働いてしまいました。ど…

天の御子は・・・

神武天皇の自伝 30 ナガスネビコが見せた矢と矢筒。これを見てわたしは驚愕した。確かにそれは高天原の神聖な武具であった。本物なのだ! わたしは気を取り直して、ナガスネビコに言った 「確かにお前が君と報じるニギハヤヒは、天の御子であることに間違い…

捕らえられたナガスネビコ

神武天皇の自伝 29 ナガスネビコとの戦いは、我が皇軍の勝利に終わった。 皇軍を勝利に導いた金色に輝く鵄は、その様を見届けると飛び立った。そしてまた、ゆっくり旋回しながら空のかなたに飛び去って行った。 「アマテラス大御神は、ずっとわたしを見守っ…

金鵄

神武天皇の自伝 28 我が皇軍は、大和へ進軍していく。もうすぐ宿敵ナガスネビコの本拠地だ。 時はすでに12月、冷たい風が吹いていた。 やがて遠くに軍勢が見えた・・・手ぐすね引いて待ち構えるナガスネビコの軍だ。 我が皇軍はそのまま進軍していく。 そし…

撃ちてし止まん

神武天皇の自伝 27 磯城の地でエシキを討ち、我が皇軍は大和の平原に進軍していった。 いよいよここは宿敵、ナガスネビコの本拠地である。 斥候から帰ってきた兵士の話によると、すでにナガスネビコは、皇軍が東から攻めてくるという情報を得ているらしい。…

エシキを討つ

神武天皇の自伝 26 皇軍は忍坂でヤソタケルを討ち、さらに進軍し磯城(しき)の地に出た。ここは大和の平原の西の端である。ここを越えれば大和だ。 この磯城の地は、エシキ・オトシキの兄弟が支配していた。この兄弟たちについては、熊野からついてきた国つ…

策略

神武天皇の自伝 25 わたしはヤソタケルのもとへ使者を送った。 「我々は決してあなた様に反抗する気はございません。あなた様に仕えたいと思い、日向から出向いてきたのでございます。 その証にあなた様を宴にお招きしたいと思います。ぜひ、兵士の皆さまも…

忍坂にて・・

神武天皇の自伝 24 宇陀でエウカシを誅殺したわたしは、オトウカシも味方につけて、皇軍を率いてさらに大和を目指す。 そして忍坂(おしさか)までたどり着いた。ここは大和の平原の西の端だ。ここを越えればいよいよ大和である。 この忍坂はヤソタケルが支…

宴の席で

神武天皇の自伝 23 エウカシは自分が仕掛けた罠にはまって死んでしまった。 オトウカシは改めてわたしに恭順の意を表した。そして今度は本当に我々を歓迎する宴を開いてくれたのである。 オトウカシはわたしだけでなく、側近や従者、兵士たちも招いてくれた…

エウカシの末路

神武天皇の自伝 22 わたしはミチノオミとオオクメを伴ってエウカシのもとへ出向いて行った。 エウカシは新しく造った宮の前で待っていた。わたしを見ると、満面の笑みで出迎える。 「ようこそ、天の御子様、よくいらっしゃいました。さあ、宮の中では宴の準…

オトウカシが訪ねてくる

神武天皇の自伝 21 わたしはミチノオミとオオクメを伴い、エウカシ・オトウカシの兄弟の屋敷に出向こうとしている時だった。 兄弟の弟、オトウカシが我々の陣を訪ねてきたのである。 「オトウカシ、どうした?わたしは今からそなたの屋敷を訪ねていくところ…

屋敷を訪ねる

神武天皇の自伝 20 わたしはエウカシ・オトウカシの屋敷を攻撃すべく進軍の準備をしている最中だった。その時、一人の使者がわたしの陣を訪ねてきたのだ。 使者はエウカシ・オトウカシの兄弟からだった。 「先ほどは天の御子の使者ともあろうものに、大変無…

八咫烏の遣い

神武天皇の自伝 19 皇軍は八咫烏に導かれ、途中味方を増やしながら進軍していき、宇陀に入っていった。 味方に加わったこの土地の者の話によると、宇陀はエウカシ・オトウカシの兄弟が支配する土地であるという。 「エウカシ・オトウカシの兄弟は他者の干渉…

八咫烏とゆかいな仲間たち

神武天皇の自伝 18 タカクラジは、続けて夢の話をする。 「アマテラス大御神に続いてタカミムスビの大神がおっしゃいました・・・」 その話によると・・・ ここから先、荒ぶる神が多いので、このまま進んではいけない。これから天より八咫烏(やたのからす)…

タカクラジが見た夢

神武天皇の自伝 17 タカクラジの持ってきてくれた剣のおかげで、我が皇軍は息を吹き返し荒ぶる神も退けられた。 「タカクラジ、ありがとう。助かったよ。でも、どうやって、この剣を手に入れたんだい?それに、アマテラス大御神の使いって、どういうことだ?…

剣を受け取る

神武天皇の自伝 16 ・・・・・・・・・・ ・・・いったい、どうしたというのだ・・・・ ・・・・そうだ・・・わたしは熊に襲われ、兵士もろとも気を失ったんだった・・・ ・・・・と・・・すると・・・ 「え、こうして寝ている場合じゃないぞ!!」 わたしは…

熊との遭遇

神武天皇の自伝 15 嵐に流されて上陸した皇軍は、陸路、大和を目指していく。 しかしそれは険しい山道だった。これまで艦船を自由に操ってきた我々は、今までとは全く違った苦しい道のりを進んでいた。 時には背の高い草をかき分け、時には切り立った崖沿い…

嵐に遭遇

神武天皇の自伝 14 熊野の神邑(みわむら)を出港してしばらくのことだった。 それまで順調な航海が続いていたが、にわかに雲行きが怪しくなり始めた。空の色が暗くなったかと思うと、風が吹き始め、だんだん強くなる。雨も降り始めた。 そして見る見るうち…

神に祈る

神武天皇の自伝 13 名草村でナグサトベを誅殺した後、わたしは艦隊を出港させて、紀国の沿岸を南に進んでいた。 紀国の南端を越えて、今度は沿岸に沿って針路を北にとり、狭野(さの)にいったん上陸した。そこでいったん休憩を取り、さらに艦隊を進める。 …

ナグサトベの攻撃

神武天皇の自伝 12 兄イツセを亡くしたわたしは、竃山にイツセを葬った後、軍勢を率いて港に停泊している艦船に戻っていた。 そこへ、見回りの兵士が駆けつけてきた。 「イワレさま!また軍勢が攻めてきてます!」 「なんだと?!」 一体、どこの軍が攻めて…

イツセを葬る

神武天皇の自伝 11 「ああ、わたしはあんな卑しい奴の手傷を受けて死ぬのか!!」 それっきりだった・・・その雄たけびを最後に、兄イツセは息をしなくなってしまった・・・ 「兄上~~!!」 わたしは混乱していた。イツセとの、生前の記憶が頭をめぐる・・…