古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

焼け野からオオナムヂが

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 まだ煙がくすぶる焼け野原の向こうから、ゆっくりと人影が近づいてくる・・・オオナムヂだ。

 

この大火の中を乗り切ったわけか・・さすがだ。

しかしどうやって、この猛火を逃れたのだろうか・・

 

オオナムヂはゆっくり近づいてきた。その身体、やけどひとつしていない。

 

そばに来たオオナムヂは、わたしより前に娘のスセリヒメのほうを見つめていた。スセリヒメは喜びにあふれた顔でオオナムヂを見つめ返す。

 

・・・こいつら・・・

 

そしておもむろにオオナムヂわたしのほうを向くと、一本の矢を差し出した。私が拾ってこいと命じた鏑矢(かぶらや)だ・・こいつ、猛火から生還しただけでなく、きちんと命令通り矢を持ち帰ってきたとは・・・

 

そしてオオナムヂが口を開いた

スサノオさま、ご命令の通り、矢をお持ちしました。」

 

「御苦労・・・む・・・この矢には羽根がついていないが」

 そう、オオナムヂが差し出した矢には、矢羽根がなくなっていた。

 

「もうしわけありません、実は矢羽根は、子ネズミがかじってしまったのです」

 

これを聞いて、わたしはピンときた・・・そうか・・・こいつ、今度はネズミの助けを借りたのだな・・・

こいつはネズミさえも味方にしてしまう力があったのか・・・出雲の国では、ウサギも彼の味方をしたという・・・

 

考えてみれば、とんでもないやつだ・・・

 

オオクニヌシの話すところでは、猛火に囲まれたとき、一匹のネズミが出てきて「うちはほらほら、そとはすぶすぶ」と言うと、小さな穴にもぐってしまったらしい。

ネズミの言葉を「内には大きな洞穴がありますぞ、外は小さくすぼまっていても」という意味だと感じたオオナムヂは、その場をどんと踏みしめた。するとそこに大きな穴が開きオオナムヂはそこに落ちて、火は穴の上を走って行ったというのだ。

矢もネズミが持ってきてくれたという。

 

わたしはスセリヒメとオオナムヂを連れて、宮殿に帰って行った。

  

  

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