建内宿祢の自伝 72

百済から来た渡来人、ヌリノミから使者がきました。ヌリノミの屋敷に陛下(仁徳天皇)の后、イワノヒメが滞在していると知らせてきたのです。
わたくしはすぐにこのことを陛下に奏上いたしました。
「なに、イワノヒメが、ヌリノミというものの屋敷に・・」
「はい、左様でございます。だった今、ヌリノミの使者が伝えてきました」
「う・・・む、よし、では舎人のトリヤマを遣わして、后を迎えに行かせよう」
こうしてイワノヒメを連れ戻すために、トリヤマが派遣されることになりました
陛下はトリヤマに歌を託されました
いそげトリヤマ いけトリヤマ
追いつけトリヤマ わが妻に
いとしいわが妻 山城に
トリヤマ行くまで 待ってくれ
陛下の思いを託されたトリヤマは、すぐに山城に向けて出立いたしました
しかし・・
トリヤマはイワノヒメに会うことはできなかったのです。イワノヒメに拒絶され屋敷にも入れず、陛下の思いを伝えることができないまま、朝廷に戻ってきたのでありました・・
「うーむ、トリヤマはだめだったか・・・タケウチ、どうしよう・・・」
陛下(仁徳天皇)は大変お困りの様子でわたくしに仰せになりました。
わたくしはしばらく考えてから
「イワノヒメさまにおつきの女官に、和邇出身のクチヒメがおりましたよね・・
朝廷に今、クチヒメの兄、クチコが出仕しております。彼を遣わしてみてはいかがでしょう・・おつきの女官の兄ならば、イワノヒメもあってくれるかもしれません」
「そうだな・・やってみるか・・・」
そして陛下はクチコを呼び出しました。そしてイワノヒメを連れ戻すようお命じになると、クチコにも歌を託されました。
神の御山の 猪は
肝の中まで わかるのさ
君の心と わが心
思い交わして 見たいけど
山城の女 鍬持って
畑に作った 大根の
ように白き 君の手と
交わしたあの日 思い出す
かくしてクチコはイワノヒメのもとに出向いていきました
そして数日たち、クチコが戻ってきました。そして陛下の御前に出ると、このように申し上げたのです
「陛下、ご覧に入れたいものがございます。イワノヒメさまがいらっしゃる山城のヌリノミの元へ、御自らお来しくださいませ」
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☆大根のような手足
今、女性に「大根足」などと言ったら怒られますね。
しかし品種改良が進んでいない昔の大根はもっとほっそりしていました。当時は色が白く美しい手足の形容であり、「大根のような手足」というのは誉め言葉でした。
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