古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ワカヒコも・・・

シタテルヒメは、凛々しい若者を連れてきた。彼は、高天原から来たワカヒコだと名乗った。 私はふたりを見てすぐにわかった。シタテルヒメとワカヒコが恋に落ちていると・・ わたしはワカヒコに向かって言った。 「ワカヒコ・・・お前も高天原からの使者か・…

シタテルヒメとワカヒコ

高天原からホヒがわたしのもとに降りてきて、出雲国造になり3年の月日が経った。高天原では日本の支配権をわたしからアマテラスのもとに移譲させようと画策しているらしい・・ そんな折、わが娘、シタテルヒメがわたしのもとを訪ねてきた。シタテルヒメは九…

ホヒが来た理由

ホヒが私に語ったところでは・・ 高天原に鎮座される太陽神、アマテラス大御神が仰せになったそうだ。 「豊葦原の千秋の長五百秋の瑞穂の国は、わたしの子が治めるべき国です。しかし今、国つ神であるオオクニヌシが治めています。 この瑞穂の国は、我が天つ…

高天原から降りてきた神

わたしが日本の国を統治するようになり、月日が経った。日本の国は繁栄していた。 そんなある日のことだった。配下の神がわたしのもとに来ていった。 「オオクニヌシさま、高天原から一人の神がおりてきて、面会を求めております」 「なに?高天原の神が、わ…

日本の国造り

わたしはスクナビコナと最初に出会った、美保岬の海岸に来ていた。その時、沖のほうからまばゆい光がかがやいてきたのだ。 何という、神々しい光だろう・・・ わたしは我を忘れてその光に見入っていた。神秘的というか・・・ まばゆい、それでいてまぶしくな…

スクナビコナが去って・・

スクナビコナは遠い国に行ってしまった。私の心にはぽっかりと大きな穴が開いたように感じた。 これまで二人三脚で、日本の国を豊かにするために尽力してきた、その相棒がいなくなってしまったのだ。彼がいなくては、何もする気が起きなかった。 ・・・しか…

別れ

ある日、わたしとスクナビコナは、伯耆の国に来ていた。そこにはスクナビコナと協力して切り開いた粟の畑が広がっていた。もうすぐ収穫の季節である。一年の苦労が報われ喜ぶ民の笑顔が浮かぶ。 わたしはスクナビコナに向かって言った 「スクナビコナ、どう…

スクナビコナとの地方巡行

こうしてわたしとスクナビコナは義兄弟の契りを結んだ。そして一緒に日本の国造りに励んでいった。 スクナビコナはその小さな体に似合わず、知恵の塊であった。酒造、医薬、呪術など、ありとあらゆる知識を持っていた。 スクナビコナという強力な相棒を得て…

小さな神の正体

海から来た小さな神。誰もその正体を知らなかったが、ヒキガエルが「クエビコの神なら知っています」と教えてくれた。 わたしはさっそくその神を連れて、クエビコのもとに赴いていった。 ところで、クエビコというのは、山田の案山子(カカシ)のことである…

ヒキガエルが出てきて

出雲の美保岬で、草の実の船に乗り、蛾の皮をはいだ着物を着て、はるか沖からやってきた小さな神。名を聞いてもにこにこ笑うだけで何も答えなかった。 わたしは従者としてついてきた家来に、この神の正体を知っているか尋ねてみた。しかし誰も知らないという…

海から来た小さな神

さて、我が妻スセリヒメとの間には、ヤガミヒメやヌナカワヒメを巡ってなんだかんだあったが、その間にもわたしは支配地を広げ、ついには日本全土をその手中におさめようとしていた。 もっとも国の支配というのは、ただ力で抑えればいいというものでもない。…

スセリヒメと・・

さて、わたしは越の国を平定し、出雲に戻ってきた。 ところで、わたしの妻スセリビメは、とても嫉妬深い女神であった。 わたしにとってヤガミヒメを追い出されたのは痛い出来事だった。しかし、越の国のヌナカワヒメまで嫁にしたことが、またスセリヒメの怒…

ヌナカワヒメを娶る

わたしは出雲の国の支配をかためた後、徐々に周辺国へ支配地を広げていった。 どうしてもわたしの支配に入ることを潔しとせず、やむなく武力で制圧したことももちろんあった。しかしわたしが支配地を広げるにつれ、進んで私の傘下に入る豪族も多くなってきた…

因幡の姫神・・・

さて、わたしはいずれ日本全国の支配を画策していたが、まずは足元、出雲をかためなければならない。 そのころは出雲の国にも統一した政体はなく、各地域で豪族が覇を争っている状態であった。 そんな中、わたしは各地の豪族を次々と従えていった。 武力で制…

生太刀が斬る!

異母兄の軍勢が射た矢はわたしには当たらず、反対にわたしが射たスサノオさまの生弓矢(いくゆみや)の矢は確実に敵の射手を倒していった。 弓矢ではかなわないと悟った相手は白兵戦に持ち込んできた。大勢の敵がわたしに向かって剣をもって斬り込んでくる。…

生弓矢を射る!

スサノオさまの天沼琴(あめのぬごと)がなった。琴は異母兄たちの軍勢がせめてきているとおしえてくれたのだ。 「・・・オオクニヌシさま・・・」 母と、スセリヒメは、不安そうに私を見つめる。 「なに、心配ない。 スセリヒメ、それと母上、屋敷の戸を閉…

琴の予知

わたしはオオナムヂからオオクニヌシと名を変え、根の国・スサノオさまのもとから日本に戻ってきた。スサノオさまの娘、スセリヒメを妻にして。 私は出雲に帰り、スセリヒメとともにまず母のもとを訪ねた。 「母上!ただいま帰りました」 母は喜びあふれる顔…

オオナムヂからオオクニヌシへ

わたしはスセリヒメを背負うと、スサノオさまの屋敷を抜けだした。うまくいったかのように見えた。 しかし・・・ スサノオさまの宮殿を出た時だった。背負っているスセリヒメが持っていた琴が、そばに立っていた木に触れたのだ。 ぐわ~わあ~~ん!! 木に…

わたしは変わった・・

スサノオさまは眠り込んでしまった・・・ よし!今だ! わたしは心の中で叫んだ。 もう潮時だ、スサノオさまのもとから逃げ出そう! そう思ったのである。 そして、部屋の隅に控えていたスセリヒメに、眼で合図を送った。 「わたしは行くよ・・・一緒に来て…

シラミ?・・・

わたしはスサノオさまにシラミ取りを命じられて、スサノオさまの頭の後ろにしゃがみ込んだ。そしてスサノオさまの長い髪の毛をかき分けた。 すると・・・ わたしは思わず手を引っ込めた・・ シラミではない!! スサノオさまの髪の中ではい回っていたものは…

矢を持って帰る

野原を焼き尽くした火は、翌朝になってやっと鎮火した わたしは穴をはい出て、スサノオさまの宮殿のほうへ向かって歩く。まだ野のあちこちでは、残り火がくすぶっていた。 ゆっくり歩いていくと・・・残り火くすぶる野からたちあがる煙の向こうに、ふたつの…

穴の底で

わたしは穴の底に落ちた。思いっきり身体を打ったが、地を這ってきた猛火の壁からは逃れることができた。 「うう・・・痛てて・・・」 私はやっとのことで起き上がった。穴の上のほうはまだめらめらと火が燃えている。 その時、足元に何か動く気配を感じた・…