古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

兄ホデリは・・・

山幸彦の自伝 5 針を持っていかれた・・・わたしは青くなった。 兄ホデリが大事にしていた針をなくしてしまったのだ・・・ ・・・あんなに頼み込んで、やっと頼み込んで貸してもらった釣り針なのに・・・兄上はどんなにか怒るだろうな・・・ わたしは重い足…

針が・・・

山幸彦の自伝 4 さて、その翌日。わたしは兄ホデリの道具を持ち、勇んで日向の海にやってきた。そして、魚がよく取れそうな磯を探し出すと、そこに腰掛けた。 天気はとてもよく、穏やかな陽が降り注いでいる。磯に寄せる波の音が心地よい。絶好の釣り日和だ…

道具を取り換える

山幸彦の自伝 3 「兄上・・・明日、わたしと道具を取り換えてみませんか」 「え・・・どういうことだ?」 「明日一日、兄上とわたしの道具を交換してみるんです」 「なに・・・?」 「わたし、兄上の道具を持って、海で釣りをしてみたいんです。代わりに兄上…

ある考え

山幸彦の自伝 2 その日、兄ホデリは朝からいつものように海に釣りに出かけていた。わたしは高千穂の宮に残り、政務をとり行っていた。 夕方になり、ホデリが帰ってきた。 「ホオリ、今帰ったぞ。見ろよ、今日も大漁だ!」 ホデリが持ってきた籠には、今日も…

山幸彦の自伝 プロローグ

山幸彦の自伝 1 わたしの名はホオリ。アマテラスから続く天つ神の子孫として、日向の高千穂の宮で生まれた。 わたしの父はニニギ。アマテラスの孫にあたる。すなわちわたしはアマテラスの曾孫、アマテラスから数えて4代目ということになる。 父のニニギは若…

古志から

国引き神話 4 新羅の国から、また北門の佐伎から、北門の波良から、わたしは国を引いてきた。 もう少しばかり国を広げたい。どこか、国が余っているところはないか・・・わたしの目に留まったのは、古志の都都(こしのつつ)の岬だった。 古志は広大な国で、…

北門から

国引き神話 3 さて、新羅から国を引いてきて、出雲の国の土地は少し増えた。しかしまだまだ小さい。もっと他にひいてこれる国はないかと、海の彼方に目を凝らしてみた。 すると、目に留まったのは北門の佐伎(きたどのさき)だった。そこはそのころまだ誰も…

新羅から

国引き神話 2 八雲立つ出雲の国は、小さな国だった。まだ織っている途中の幅が狭い布のように。 しかし国ができて時が経ち、人口も増えてきた。この狭い国土のままでは民の暮らしは成り立たない。何か良い方法はないだろうか・・・ わたしは海岸に出て、海の…

国引き神話 プロローグ

国引き神話 1 わたしの名はヤツカミヅオミヅノ。出雲に生まれた国つ神である。 わたしはスサノオの玄孫である。すなわちスサノオから数えて4代目の子孫ということになる。 スサノオは、出雲の人々を苦しめていた八俣のおろちを退治し、出雲の英雄と言われた…