2020-01-01から1年間の記事一覧
スサノオさまは火矢を放ち、枯野の真ん中でわたしは猛火の壁に囲まれた。逃げ場はない・・・ 四方から火は迫り、目の前まで来ている・・どうすれば良いか・・・わからない・・・ ・・・もう、覚悟を決めるほかないのか・・・ その時だった・・・足元で何か動…
その日の午後、スサノオさまは突然、わたしに言った 「おい、今から外に行くぞ!ついてこい!」 「は、はい!」 わたしは一抹の不安を感じつつも、拒否するという選択肢はなかった。 スサノオさまはわたしを、根の国の野原に連れて行った。野原は一面、枯れ…
蜂とムカデの部屋に閉じ込められた翌朝、昨日と同じくスセリヒメが迎えに来てくれた。 「オオナムヂさま、おはようございます」 「やあ、おはよう、スセリヒメ。昨日も助かったよ」 「すみません、父上が・・・」 「いや、いいよ。わかっているよ、お父上の…
スサノオさまの宮殿で世話になって二日目の夜である。 スサノオさまは、わたしを宮殿の一室の前に連れてきた。そして 「ここがお前が今夜寝る部屋だ、入れ」 という。 昨日のことがあったので、わたしは嫌な気はした。しかし、拒否することなどできるはずも…
スサノオさまの屋敷で、蛇の部屋に泊められた翌朝。あかり取りの窓からは朝のひかりが差し込んでいる。 さて、蛇の部屋に閉じ込められて、これからどうしたものか・・と思っていたところに、扉の方からガタガタという音が聞こえてきた。外からかけられた閂を…
スサノオさまに「寝室に案内してやる」と言われて、閉じ込められた部屋で見たもの・・・ ・・・それは・・・ 蛇!・・・だった! 床には足の踏み場もないほど、無数の蛇がうようよしている・・ちょっとでも油断すれば食いつかれてしまうだろう・・ 中には毒…
食事が終わってのことだった。おもむろにスサノオさまが申された。 「寝室に案内してやる。来い」 わたしはスサノオさまについていった。そして宮殿の一室の前で止まると、その扉を開けて 「ここがお前が今夜泊まる部屋だ。入れ!」 という。 わたしは素直に…
「お前、アシハラシコオだな」 ・・・スサノオさまはそう申された・・・いったいどういうことなのだ・・・ アシハラ(葦原)は日本のことだ・・シコオ(醜男)とは強い男、を意味するが・・・日本の強い男、って、わたしが?・・ そういえば、木の国のオオヤ…
スセリヒメは、わたしを宮殿の一室に連れて行った。 そこには一人の大男が背を向けて座っている・・・これがスサノオさまか・・・私は緊張して足が震えているのが分かった。 そんなわたしの様子を察してか、スセリヒメはわたしをみつめる ・・・大丈夫よ、安…
わたしは根の国、スサノオさまがいると思われる宮殿の前に来ていた。 わたしは宮殿の戸をたたいた。 「はい、ただいまあけます、しばしお待ちを」 中から声が聞こえた。若い女性の声のようだ・・ そしてぎいーと鈍い音をたてながら戸が開いた。そして戸の中…
わたしは木の国のオオヤビコさまの屋敷から、根の国に来ていた。オオヤビコさまの屋敷の裏庭に生えている木の股は、根の国につながっていたのだ。 根の国というのは日本の地下深く、地底にある国である。神代のこのころは、今とは違って、地底にある根の国に…
わたしは木の国で、オオヤビコさまの屋敷を訪ねて行った。オオヤビコさまは家屋の神で、木の神でもある。 オオヤビコさまの屋敷に着くと、わたしは事情を話した。 オオヤビコさまは 「そういうことか、安心するがよい。この木の国までは兄君たちも追ってはこ…
わたしを殺そうとした異母兄たちは、さっさと逃げ出していた。 「母上・・また助けていただいたのですね・・ありがとうございます」 母はわたしに向かって心配そうに言う 「オオナムヂ、無事でよかった ・・・でもここにいると、いずれお兄様方に殺されてし…
わたしは一度死んだが、母神とサキカイヒメ・ウムカイヒメの力によりよみがえった。 そんなある日、また異母兄たちがわたしを誘い出した。 これはわたしの報復を恐れた異母兄たちが、先手を打ってまた私を嵌めようと企んだことだった。 しかしそのころのわた…
・・・・・ どれくらいの時間が立ったのだろうか・・・ わたしは気が付いた・・・私が眼を開けると、そこに見たものは・・ 母だった。 母が心配そうに、私を見ていたのだ・・ 「・・・母上・・・」 「ああ、オオナムヂ!気が付いたんだね!よかった!」 母は…
わたしは異母兄たちに連れられて、伯耆の手間山に来ていた。 異母兄は言う 「この山に赤猪が住んでいる。俺たちが赤猪を脅して追い出すから、お前はふもとで受け止めろ!」 「え・・・でも、それはちょっと・・・」 いくら何でも、山からものすごい勢いで逃…
わたしはヤガミヒメの屋敷についた。すると、門の前には・・ ・・異母兄たちが待ち構えていた。 「あれ?兄上?どうされたのですか」 「ああ、ヤガミヒメさまは、お前の嫁になるんだとよ!」 ・・・異母兄がそういうということは、うさぎの話も村人の話も本…
わたしは袋を担いだまま、ヤガミヒメの里にやってきた。先に行った異母兄たちとは一日以上遅れてついただろうか・・ わたしはヤガミヒメの屋敷に向かって歩みを進める。しかし私は村人たちの、奇異な視線を感じていた。田畑で農作業する村人、道ですれ違う村…
うさぎはこんなことを言った 「ヤガミヒメさまは、お兄様がたの誰とも結婚することは無いでしょう。袋を担いでいても、ヤガミヒメさまはオオナムヂさまを気に入られます・・」 ・・・え・・・どういうことだろう・・・わたしは別に、ヤガミヒメに求婚するつ…
ワニに皮をむかれたうさぎは、元のふさふさした毛が生えた、かわいらしいうさぎに戻っていた。 「よかったね、すっかり元に戻ったよ」 うさぎは見るからに喜びあふれた表情を浮かべていた。治った自分の体を存分に楽しむかのように、私の周りを跳ね回ってい…
うさぎから話を聞いたわたしは、おもわずふう~と、大きなため息を漏らした。 「先に通った神様というのは、わたしの兄上たちだ・・すまなかったね・・」 皮を剥がれて苦しんでいるうさぎを、さらに痛めつけるとは・・・こんなことして何が楽しいんだ、異母…
うさぎは自分にふりかかった災難を私に話しだした。 うさぎの話によると・・ うさぎは隠岐の島に住んでいたそうだ。隠岐の島からは、山陰の海岸がかすかに見えていた。海を渡っていった日本はどんなところなんだろう・・・そう思ったうさぎは対岸の因幡にわ…
わたしは袋を担いで、異母兄たちのあとをついていった。 しかし、袋は重い・・当然だ。令和の今のようにホテルや旅館が整備されているわけではない。当時の旅と言えば、食糧から寝具まですべて持参した。それらを詰め込んだ袋の重さは相当のものである。 何…
因幡の国にとても美しいと評判の女神がいた。名をヤガミヒメという。 そしてヤガミヒメが、結婚相手となる男神を探しているという話も出雲まで伝わってきたのだ。この話を聞いたわたしの異母兄たちは、我先にとヤガミヒメのところに求婚に向かう準備を始めた…
わたしの名はオオクニヌシ。はるかな昔、出雲の国で生まれた神である。 最もオオクニヌシというのは、後にわたしが日本の国を統治するようになってからの名である。若いころのわたしはオオナムヂと呼ばれていた。 父の名はアメノフユキヌ。父はスサノオから…
わたしが禊をし、三貴神を産んでから数年の時が経った。 わたしは悩んでいた。 悩みの種は末っ子のスサノオである。 アマテラスとツクヨミはそれぞれの世界に赴き、私が指示した通りの世界を治めている。しかしスサノオだけは違ったのだ。 スサノオは何年た…
わたしは再び浅瀬に戻ってきた。既に夜明は近い。 わたしは禊の仕上げをしようと思ったのだ。 浅瀬にしゃがみ込み、川の水をすくって左の眼を洗った。その時だった・・・ 辺りがパッと明るく輝いた。まばゆいばかりの、それでいてさわやかな光だった。 一瞬…
黄泉の国から帰ってきたわたしは、日向の橘の小戸の阿波木原に来ていた。 わたしは禊(みそぎ)のために、九州のこの地にやってきたのだ。 わたしは黄泉の国に行ってきた。黄泉の国は死者が行く穢れた国である。 その黄泉の国に行った私の体にも穢れがまとわ…
黄泉の醜女や雷神の追手を振り払い、黄泉比良坂をのぼって、わたしは現世に戻ってきた。 しかし、ほっとしたのもつかの間だった。 私の眼に、坂を駆け上がってくるイザナミが目に入ったのだ。かつて愛した女神の、その鬼気たる表情、今も忘れられない。 醜女…
黄泉の醜女に追われ、追いつかれそうになる。 わたしは髪を束ねていたカズラをほどいて投げつけた。カズラは山ぶどうに変わり、それを醜女がもぎ取った食べている間に私は逃げた。 しかし醜女どもはあっという間に食べ終わると、再び私を追ってきた。見る見…