古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

うさぎが言った・・・

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ワニに皮をむかれたうさぎは、元のふさふさした毛が生えた、かわいらしいうさぎに戻っていた。

 

「よかったね、すっかり元に戻ったよ」

 

うさぎは見るからに喜びあふれた表情を浮かべていた。治った自分の体を存分に楽しむかのように、私の周りを跳ね回っていた。

そんなうさぎを見ていると、わたしもうれしさで胸がいっぱいだった。小さな命を一つ助けることができて、本当に良かった・・皮をむかれたうさぎは、あのまま放っておいたら確実に弱って死んでいただろう・・・

 

そんなうさぎは、ひとしきり跳ねまわった後、私の前にちょこんと座っていった

 

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「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません」

「いやいや、大したことじゃないさ。まあとにかく、治って良かったね」

「あのう・・・ところで、あなた様・・・」

「ん?どうしたの」

「あなた様、もしかして、オオナムヂさまではありませんか?」

 

うさぎのこの一言を聞いたとき、わたしは驚いた。なぜ初めて会ったうさぎが、わたしの名前を知っているのだ?・・

 

わたしはオオクニヌシと改名する前、このころはオオナムヂと名乗っていた。

 

「え?そうだけど、何で知ってるの?」

 

「それはもう、オオナムヂさまのおうわさは、隠岐の島まで届いております。英雄スサノオの血を引く尊いお方ながら、まったく威張ったところがなく、とてもお優しくて、困った人を見れば助けずにおれない方だと・・私をやさしく助けてくれた時、これはオオナムヂさまに違いないと思いました。」

 

意外だった・・まあ確かに、心当たりがないこともないが・・わたしのふだんの行動がそんなに遠くまで伝わっているとは夢にも思っていなかったのだ・・

 

「ははは、よしてくれよ、うさぎくん!わたしはただの荷物もちさ。ヤガミヒメさまに求婚に行く兄上のお供をしてるだけだよ・・・

あんまり遅れると兄上に怒られるから、もういくよ」

 

そういうと、うさぎはこんなことを言った

 

ヤガミヒメさまは、お兄様がたの誰とも結婚することは無いでしょう。袋を担いでいても、ヤガミヒメさまはオオナムヂさまを気に入られます・・」

 

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オオクニヌシの自伝 目次

 

 ☆白兎神社

 

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物語の舞台となった鳥取市の白兎海岸にあり、兎神を祀ってあります。参道の途中にはうさぎが体に着いた塩を洗い流したという「御身洗池」(みたらしのいけ)があります。

 

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