古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

異母兄たちの袋を担ぐ

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因幡の国にとても美しいと評判の女神がいた。名をヤガミヒメという。

 

そしてヤガミヒメが、結婚相手となる男神を探しているという話も出雲まで伝わってきたのだ。この話を聞いたわたしの異母兄たちは、我先にとヤガミヒメのところに求婚に向かう準備を始めた。

 

わたしはどうしたのかって?・・・わたしは別に、ヤガミヒメを嫁に迎えようなんて気持ち、さらさらなかった。この出雲の地で、つつましく暮らせて良ければそれでよかった。

なので、ヤガミヒメのところに行こうと浮き立つ異母兄たちを横目に、ひたすら畑で鍬をふるっていたのだ。

しかし・・・

 

その日もわたしは畑に出て、農作業をしていた。するとそこに、大挙して異母兄たちが現れたのだ。

 

「おい!オオナムヂ!」

「あれ、兄上・・・どうされたのですか?もう因幡に向けて出立されたはずでは?」

「俺たちの荷物が多くて、荷物持ちが足りないんだ。お前、この袋をもって、因幡までついてきてくれ!」

 

そう言って、大きな袋を一つ、私の前にどさっと投げ出したのだ。

 

「・・・わかりました・・・」

 

そのころのわたしは、異母兄たちに逆らうことができなかった。

わたしは袋を担ぐと、兄上たちのあとをついていった。

 

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