わたしは袋を担いだまま、ヤガミヒメの里にやってきた。先に行った異母兄たちとは一日以上遅れてついただろうか・・
わたしはヤガミヒメの屋敷に向かって歩みを進める。しかし私は村人たちの、奇異な視線を感じていた。田畑で農作業する村人、道ですれ違う村人、みな好奇な目でわたしをみつめるのである。
なんなんだ?袋を担いだわたしがそんなに珍しいのか?
そんななか、道を向こうから歩いてきた村人が立ち止まり、わたしに話しかけてきた。
「あんた、もしかして、出雲のオオナムヂ様じゃないか?」
「・・・ん?そうだが、そなた、なぜわかるのだ?」
「そりゃー、村の間で噂しきりだよ!大きな袋担いでくる神様が、ヤガミヒメ様が結婚相手に選んだオオナムヂ様だってね」
「ええっ・・・・!?」
私は次の言葉が出なかった・・・ヤガミヒメ様がわたしを結婚相手に選んだ・・・って、どういうことだ?私はヤガミヒメ様にあってもいないのに・・・
村人の話によると・・
異母兄たちの求婚はことごとく失敗したらしい。そしてヤガミヒメさまは言ったそうだ
「わたしはあなたたちの誰とも結婚は致しません。あなたたちが出雲の英雄スサノオの子孫であることを鼻にかけて乱暴のし放題、出雲の民が困っていることは因幡の国までうわさが届いております。
それに比べて末の子のオオナムヂさまは、まったく威張ったところがなく慈悲深いお方で、出雲の民はみなオオナムヂさまを慕っていると聞こえてきてます・・
わたしは嫁に行くならオオナムヂさまのところに行きとうございます」
・・・因幡の白兎はこうなることを見越してあんなことを言ったのだろうか・・・
わたしはキツネにつままれたような心持だった。
村人と別れると、わたしは再びヤガミヒメの屋敷に向かって歩みを進めた。
うれしさなんか全然感じなかった・・・うれしさというより、ヤガミヒメさまとあったら何と言おうか・・・戸惑いの気持ちだった。
そうこうしている間にヤガミヒメの屋敷が近づいてきた。
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☆賈沼神社
ヤガミヒメの里と言われる鳥取市河原町にあり、ヤガミヒメを祀ってあります。
近くにはヤガミヒメの話を解説した石碑が並ぶ八上姫公園があり、川を挟んで対岸の嶽古墳はヤガミヒメの墓と云われています。
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