古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

火の壁が迫る!

 

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 その日の午後、スサノオさまは突然、わたしに言った

 

「おい、今から外に行くぞ!ついてこい!」

「は、はい!」

 

わたしは一抹の不安を感じつつも、拒否するという選択肢はなかった。

 

スサノオさまはわたしを、根の国の野原に連れて行った。野原は一面、枯れ草で覆われている。

 

するとおもむろにスサノオさまは、一本の矢を取り出し、それを弓につがえて、空に向かって射った。

矢はぴゅわ~~んと、けたたましい音をたてながら、空を弧を描いて飛んでいった。鳴鏑(なりかぶら)だったのだ。

 

鳴鏑とは、大きな音をたてながら飛んでいく矢のことで、殺傷能力はない。戦いのときの合図に使う矢である。

 

スサノオさまが射った鳴鏑は、はるか遠く、野の真ん中に落ちていった。

 

スサノオさまはおもむろに私の方を振り向き、言った

「あの矢を拾ってこい!」

 

「はい!」

わたしは反射的に駆けだしていた。

そして野原の真ん中で矢を探す・・・しかし茂った枯れ草の中では、小さな矢なかなか見つからない。

わたしは草をかき分け、一生懸命矢を探していた・・・その時だった・・・

 

わたしの上空を何かが飛んでいったのに気が付いた・・・一つではない、いくつも・・・

それは、燃えていた!

 

火矢だったのだ!

スサノオさまが放ったに違いない・・・

 

 

火矢は私の周りを取り囲むようにして落ちた・・・瞬時に枯れ草に火が付いた

 

たちまちのうちに枯れ草には燃え上がり、巨大な火の壁となって私に迫ってきていた・・・

 

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