古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ガマの穂綿にくるまれと

 

f:id:karibatakurou:20200901112859j:plain

 

うさぎから話を聞いたわたしは、おもわずふう~と、大きなため息を漏らした。

 

「先に通った神様というのは、わたしの兄上たちだ・・すまなかったね・・」

 

皮を剥がれて苦しんでいるうさぎを、さらに痛めつけるとは・・・こんなことして何が楽しいんだ、異母兄たちは・・

・・元はと言えばサメを騙したうさぎが、自分で蒔いた種にしても・・

 

そしてわたしはうさぎに言った

「すぐに川に入って、体に着いた塩を洗い流しなさい」

 

うさぎはすぐに、近くの川に飛び込んだ。

 

f:id:karibatakurou:20200916180059j:plain

≪兎が塩を洗い流したと伝わる御身洗の池(みたらしのいけ)≫

 

その間にわたしは川岸に生えているガマの穂を刈りこむと、地に敷き詰めた。

 

そこに川からうさぎが上がってきた。

 

「この上に寝転んでごらん」

うさぎは言われた通り、ガマの穂の上に寝転ぶ。たちまちうさぎの体はガマの花粉にまみれた。

 

実はガマの花粉には薬効があり、後の世にも「穂黄」として外用薬として使われているのだ。ガマの穂の薬理作用と、わたしの神としての霊力の相乗作用で、うさぎの傷はたちまちのうちに癒えて、元のふさふさの毛が生えたうさぎに戻っていった。

 

 

 

 

前<<<  うさぎとわに - 古事記の話

次>>>  うさぎが言った・・・ - 古事記の話



オオクニヌシの自伝 目次

 

☆蒲黄

 

f:id:karibatakurou:20200916180821j:plain

≪白兎神社で栽培されているガマ≫

 

ガマの花粉にはフラボノイド配糖体と呼ばれる成分が含まれ、これにより細胞組織を引き締める収斂作用があり、血管を収縮させて止血作用があるとされています。このためガマの花粉は「蒲黄」(ほおう)と呼ばれ、外傷薬として利用されてきました。

(かといってそこらの河原に生えているガマの花粉を傷口につけるのはおやめください。細菌感染の恐れがあります)

 

 

≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記  本日更新
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話