古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ネズミ

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スサノオさまは火矢を放ち、枯野の真ん中でわたしは猛火の壁に囲まれた。逃げ場はない・・・

 

四方から火は迫り、目の前まで来ている・・どうすれば良いか・・・わからない・・・

 

・・・もう、覚悟を決めるほかないのか・・・

 

その時だった・・・足元で何か動くものを感じた。

足元を見ると、ネズミだった・・火から逃げてきたのだろう。

 

ネズミはさっとわたしの足元を走り去っていき、小さな穴に逃げ込んだ。

・・・私も体がもっと小さければあの穴に逃げ込めるのに・・・とても無理か・・・

 

わたしはもうあきらめていた。その時だった・・・

穴に逃げ込んだネズミが、再び穴から顔を出した・・ん?どうしたのだ?

 

するとネズミが、わたしに向かって言ったのだ!

 

「内はほらほら、外はすぶすぶ」

 

それだけ言うと、再び穴の中に引っ込んで、再び姿を見せることは無かった。

 

どういう意味だ・・・内はほらほら、外はすぶすぶ・・・ん?待てよ・・・

 

わたしは一つの考えが頭に浮かんだ・・・そしてその場を思いっきり足で踏みつけた!

 

ドン!

 

踏みつけると、地面が異常に揺れた。次の瞬間だった

 

ひゅ~ん!どしん!

 

地面が抜けてわたしの体は宙に舞った。大きな穴がそこに開いたのだ。

次の瞬間、わたしは穴の底に落ちていた・・・

 

火は穴の上の地面を通り過ぎていった。

落ちた衝撃で思いっきり身体を打ったが、とにかく助かった。

 

「内はほらほら、外はすぶすぶ」

・・・内側には大きなほら穴がありますよ、この穴の外は小さくすぼまっていても・・・

ネズミはそう言っていたのだった。

 

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根の国

 

ネズミは 根の国に住んでるからネズミなんですね。(ネズミの語源には諸説あります)

 

地底にある根の国。同じく地底には、死者が行くという黄泉の国があります。根の国も黄泉の国も、どちらも地上世界との境にあるのは黄泉比良坂(よもつひらさか)で共通しています。

 

しかし、黄泉の国はイザナミの身体が腐り、醜女や鬼神が支配する穢れた世界です。

それに比べて根の国は美しい女神スセリヒメがおり、野原が広がりネズミも住んでおり、黄泉のような陰湿さは感じません。

 

根の国と黄泉の国は、同じ日本の地底にある国と入っても別の場所と考えたほうがよさそうです。

 

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