古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

岩で道を塞いだ

f:id:karibatakurou:20200724171757p:plain

 

黄泉の醜女や雷神の追手を振り払い、黄泉比良坂をのぼって、わたしは現世に戻ってきた。

 

しかし、ほっとしたのもつかの間だった。

私の眼に、坂を駆け上がってくるイザナミが目に入ったのだ。かつて愛した女神の、その鬼気たる表情、今も忘れられない。

醜女や雷神に追わせても駄目だったので、自ら追ってきたのだろう。

 

これはいけない、どうすれば・・・

 

わたしは何かないかと辺りを見回した。

わたしの目に留まったのは、千人がかりでも動かせないような大岩だった。

 

「よし!これで道をふさごう!」

 

わたしは岩に手をかけると、渾身の力で岩を押した・・・

岩は少しずつ動いて、黄泉平坂をふさいでいく・・・

急げ・・私は自分に言い聞かせながら、もうこれ以上は出ないほどの力を出し切った・・・

 

そして岩は、黄泉への出入り口を完全にふさいだ!

 

f:id:karibatakurou:20200816112732j:plain

 

危ういところだった。

一瞬でも遅ければ、イザナミはこの地上世界まで追ってきていただろう・・

 

岩の向こうでイザナミの声がする

「ああ、イザナギ!岩を開けてください!ここ通してください!」

 

我が妻、イザナミが懇願する。しかしここを通すわけにはいかない。

「だめだ、イザナミ・・・君は死者なんだ、通すわけにはいかない・・わたしはこの日本の神なんだ。君はもう黄泉の神なんだ。わかるよね・・・」

 

・・・岩の向こうでは、イザナミがすすり泣いているようだった・・

 

イザナミ・・・かつての愛し合ってた頃のイザナミが脳裏に浮かぶ・・

しかし、今は黄泉の神となったイザナミ・・・

 

するとふいにイザナが叫んだ。

「ああ、愛するイザナギ!こんな仕打ちをされるのならば、わたしは日本の民を一日1000人、この国に迎え入れます!」

 

・・・ああ、優しかったイザナミ、死者の国に行くとこうも変わるものなのか・・・

 

私は静かに、しかし力を込めて言った

 

「そうか、愛するイザナミ!ならばわたしは、一日に1500人の赤子を日本に産んで見せよう!」

 

そしてわたしはその場を離れていった

 

「ああ、愛するイザナミよ・・・そうはいってもわたしは君のこと、一生忘れない・・」

胸に固く誓いながら・・・

 

わたしが黄泉への道を岩でふさいだこの時から、現世と死後の世界とを自由に行き来することはできなくなった。

イザナミは黄泉の大神となった。道をふさいだ岩はチカエシの大神ともいわれる。

 

黄泉比良坂は後の世、出雲の伊賦夜坂ともいわれたりした。

 

またこの時から、わたしと妻の言霊により日本の国では一日1000人の人が亡くなり、1500人新たに生まれるようになった。

もっとも昨今の少子高齢化社会を見ると、わたしと妻の言霊もその霊力を失いつつあるのかもしれない・・・

 

 前<<<  現世に戻ってきた - 古事記の話

次>>>  みそぎ - 古事記の話



イザナギの自伝 目次

 

☆黄泉比良坂

 

f:id:karibatakurou:20200913054056j:plain

 

現世と死後の世界との境にあるという黄泉比良坂。島根県松江市東出雲町揖屋に伝承地があり、伊賦夜坂と呼ばれる古道やイザナミを祀った揖屋神社が残っています。

 

karibaryokouki.hatenablog.com


≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記 本日更新
温泉の話
駅弁の話 本日更新
鉄道唱歌の  本日更新