スサノオさまの屋敷で、蛇の部屋に泊められた翌朝。あかり取りの窓からは朝のひかりが差し込んでいる。
さて、蛇の部屋に閉じ込められて、これからどうしたものか・・と思っていたところに、扉の方からガタガタという音が聞こえてきた。外からかけられた閂を外しているようだ。
そして扉がぎい~~と音を立てて開いた。そして入ってきたのは、スセリヒメだった。
「オオナムヂさま、おはようございます」
「あ、スセリヒメ・・・昨日はありがとう。おかげでゆっくり眠れたよ」
「父上がおよびですわ、こちらへ」
スセリヒメはわたしを宮殿の一室に連れて行った。
そこにはスサノオさまが座っていた。最初にに来た時と同じように背中を向けて座っていた。
私がそこに入ると、背中を向けたまま、しかし愉快そうな声で言った
「おう、よく眠れたか!?なかなかいい客間だったろう!」
わたしは正直に答えた
「ありがとうございます、ゆっくり眠れました」
別に皮肉で言ったつもりはない。スセリヒメのおかげで本当に横になってゆっくり眠れたのだ。
その声にスサノオさまは振り向いた。
さっきの愉快そうな声はどこに行ったのか、険しい表情になっている。そしてじっとわたしを見つめる。まるでわたしの答えが真実か、見極めるように・・
スサノオさまは昨日、スセリヒメがわたしに蛇除けのひれを渡してくれたことは知らないはずだ。
そして、険しい表情のまま、一言わたしに言った
「・・・そうか、それは良かったな・・・今日も一日、ゆっくり過ごすがよい」
そういうと、再び背中を向けてしまった。
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