わたしは再び浅瀬に戻ってきた。既に夜明は近い。
わたしは禊の仕上げをしようと思ったのだ。
浅瀬にしゃがみ込み、川の水をすくって左の眼を洗った。その時だった・・・
辺りがパッと明るく輝いた。まばゆいばかりの、それでいてさわやかな光だった。
一瞬後、一人の女神がそこに立っていた。その女神からはまさに神々しい光が放たれていた。日の神、アマテラスの誕生の瞬間であった。
≪アマテラス≫
次にまた水をすくい、右の眼を洗った。すると・・
今度は柔らかな光に辺りが包まれたのだ。陽の光とは違う、安らかな心地よい光である。
一瞬後、一人の男神がそこに立っていた。月の神、ツクヨミの誕生であった。
≪ツクヨミ・・・画像がありません‥≫
わたしは禊の総仕上げに、川の水で鼻を洗った。するとどうだろう・・
今度は一瞬、強い風が舞ったのだ。すさまじい風だった。その風に山も木も揺れ動いたほどだった。
静寂が戻ると、また一人の男神がそこに立っていた。武の神、スサノオの誕生であった。
≪スサノオ≫
既に夜は明けていた。朝日が三人の子を照らしている。その姿に、わたしはたとえようのない喜びを感じたのだった。
「ああ・・・わたしはたくさんの子を産んだが、最後にこんなにも尊い神々を得ることができたんだ・・・イザナミ、見てるかい・・・」
今は亡き妻の姿が脳裏をかすめる。
そう、後に三貴神と呼ばれるようになる神が、この時産まれたのだ・・
わたしは首にかけていた玉飾りを外し、それをアマテラスの首にかけた。そしてアマテラスに言った
「アマテラス・・君は日の神だ。高天原を治め、世界を明るく照らすんだ」
次にツクヨミに向かって言った
「ツクヨミ、君は夜の世界を治め、この日本の人々が暗闇に迷わないよう導いてくれ」
最期にスサノオに向かって言った
「スサノオ、君は海原を治めるんだ。かけがえのない日本の宝、海をしっかり守ってくれ」
こうして三柱の我が子の神に、日本の国をそれぞれ分治して治めるよう命じたのだった。
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