古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

再び、三たび・・

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 わたしは一度死んだが、母神とサキカイヒメ・ウムカイヒメの力によりよみがえった。

 

そんなある日、また異母兄たちがわたしを誘い出した。

 

これはわたしの報復を恐れた異母兄たちが、先手を打ってまた私を嵌めようと企んだことだった。

しかしそのころのわたしは、人を疑うことを全く知らなかった。もちろん報復など考えたこともなかったのだが・・

 

わたしは素直に異母兄たちについていった。

異母兄たちはまた、山の奥のほうへ私を連れていく。

 

そして山の中腹にあった広場、そこには一本の大木が切り倒されていた。その木の根元は二股に割かれ、その間にくさびが撃ち込んであった。

異母兄の一人が言う

 

「オオナムヂ、あの木の裂けたところの間に、勾玉を落としたんだ。すまんがとってくれんか」

「はい」

 

わたしは素直に裂けた木の間を覗き込んだ。しかしそこには何もない。

 

「兄上、何もありませんが・・・」

「そんなはずはない。もっとよく見てくれ」

 

そこでわたしは、割けた木の頭を突っ込んでのぞき込んだ。

 

その時だった!

 

「オオナムヂ!危ない!」

 

甲高い声が響いた。私ははっとして顔を上げた。

次の瞬間・・・いや、ほとんど同時だった・・・

 

バチーン!!

 

大音響が響き渡った。

異母兄が割けた木の間に挟んであったくさびを引き抜いたのだ。割けた木は再び元のようにくっついていた。

危ないところだった・・・あの声が聞こえなかったら、確実にわたしは頭部をつぶされて、また死んでいただろう・・・

 

「オオナムヂ!無事なのね!よかった!」

 

駆け付けたのは、母神だった。

 

母は、また異母兄たちがわたしによからぬことをするのではないかと疑い、わたしを探していたのだ。そしてわたしと異母兄たちの足跡を見つけ、その足跡をたどっていくと、木のまたをのぞき込むわたしと、くさびを引き抜こうとしている異母兄を見つけたというのだ。

 

こうしてわたしは二度も母神に助けられた。

 

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☆オオナムヂは二度死ぬ

 

拙ブログでは間一髪助かったことにしておりますが、古事記においてはこの時オオナムヂは再び殺されてしまいました。それを母神が生き返らせています。この時母神は誰かの助けを借りたという記述はありません。

 

・・・だったらなんで前回、焼けた岩に押しつぶされた時、天に昇ってカミムスビに泣きついたのだろう・・・

 

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