スサノオさまの宮殿で世話になって二日目の夜である。
スサノオさまは、わたしを宮殿の一室の前に連れてきた。そして
「ここがお前が今夜寝る部屋だ、入れ」
という。
昨日のことがあったので、わたしは嫌な気はした。しかし、拒否することなどできるはずもなかった。
わたしは中に入る・・・そこも昨日と同じく真っ暗だ・・・しかし何やら聞こえる・・・ぶわーんという、かすかな、甲高い音が・・・顔の周囲にはかすかな空気の動きを感じる・・・
スサノオさまは、昨日と同じく外から閂をかけて去っていった。
その部屋にも明り取りの窓がついている。そこからのかすかな光で見えたものは・・・
さっきから聞こえている音の正体・・・顔に感じていた風の正体・・・それは・・・
蜂、だった・・・大きな蜂、小さな蜂・・・いずれも毒針を持った蜂が無数に、部屋中を飛び回っていた・・・
これは・・・気が遠くなった・・・しかし、それだけではなかったのだ。
足元に何か違和感を感じた・・・目を凝らして、かすかな光で足元を見ると・・・
これもまた、猛毒を持った・・・ムカデだった!
床面が見えないほど無数にはい回っている・・・
猛毒を持ったムカデと蜂と・・・いったいどうやってこんなところで過ごせというのか・・・私の思考は完全に停止し呆然としていた・・・
その時・・明り取りの窓から声が聞こえた・・・
「オオナムヂさま・・・」
スセリヒメの声だ!
わたしは明り取りの窓に近づく。
「オオナムヂさま、これは蜂とムカデ除けのひれです。これを三回振ってください」
それだけ言ってひれを私にわたすと、スセリヒメは去っていった。
わたしはひれを受け取り、言われた通り三回振ってみた。
すると蜂もムカデもさっといなくなった。あれだけいたのに、どこに行ったのか・・・
とにかくその夜も、私は横になってゆっくり体を休めることができたのだった。
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