わたしは木の国のオオヤビコさまの屋敷から、根の国に来ていた。オオヤビコさまの屋敷の裏庭に生えている木の股は、根の国につながっていたのだ。
根の国というのは日本の地下深く、地底にある国である。神代のこのころは、今とは違って、地底にある根の国にも、また天の上にある高天原にも、その気になれば行き来することができたのだ。
わたしはそこで、オオヤビコさまの言う通り、スサノオさまの屋敷を訪ねることにした。
スサノオ・・名前は知っている。わたしの6代前の先祖だ。出雲の英雄として語り継がれている。
とんでもない暴れ者で父神のイザナギや姉神のアマテラスを散々困らせ、挙句の果てに高天原を追放され地上に降りてきたこと・・地上に降りてきてからは人々を困らせていたヤマタノオロチを退治し、出雲の民に慕われついに出雲の国の支配者にまでなったこと・・
全てが伝説として語り継がれてきた。そして出雲の国の施政を息子に譲ってからは、この根の国に移り住んだ。
スサノオさまは母神のイザナミをたいそう慕っていたそうだ。根の国に移り住んだのも、母神がいる黄泉の国に少しでも近いところに居たいからだという・・
スサノオさま、どんなお方だろう・・・
わたしは不安のほうが大きかった。
スサノオさまの様なお方がわたしのために力を貸してくれるのだろうか・・後年は出雲の支配者となったとはいえ、乱暴者とうわさが高いスサノオさまだ・・・
しかしここまでくれば、スサノオさまを訪ねていくよりほかに方法はなかった。
やがて私は、大きな宮殿の前にたどり着いた・・・ここがスサノオさまの宮殿に違いない・・
意を決してわたしは、閉まっている門の戸をたたいた。
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