古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

うさぎが泣いていた

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わたしは袋を担いで、異母兄たちのあとをついていった。

 

しかし、袋は重い・・当然だ。令和の今のようにホテルや旅館が整備されているわけではない。当時の旅と言えば、食糧から寝具まですべて持参した。それらを詰め込んだ袋の重さは相当のものである。

 

何も持っていない身軽な異母兄たちは、ずんずん先に進んでいく。

だんだんわたしは、異母兄から遅れて離れていった。

 

そして因幡の国に入り、気多岬までたどりついたときだった・・

 

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鳥取県鳥取市の気多岬≫

 

わたしは海岸を、袋を背負ってとぼとぼと歩いていた。すでに先を歩く異母兄たちの姿は見えなくなっていた。

 

そのときだった、わたしはかすかな泣き声を聞いたのだ。何かと思った。

声をするほうを見ると、何やら赤黒い塊が動いている・・・

 

なんだ、あれは・・わたしは声がするほうに、ゆっくり歩いていった。

 

そこにわたしが見たのは・・・

 

泣いている、一匹の兎だった。しかし、普通の兎ではない。体中、血だらけの、見るも無残な姿だった・・・

体を覆っている毛皮がない・・無理矢理はがされたのだろうか・・・

 

わたしはその姿に驚いた。思わず声が出た。

 

「わああっ・・・!!・・・うさぎくん!、これはいったいどうしたんだい!?」

 

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その声にうさぎは私の方を振り向いた。

二目とみられぬ血だらけのうさぎの顔・・・泣いていたうさぎは、とつとつと自分に降りかかった出来事を語り始めた。

 

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