古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

三種の神器を賜る

アマテラスは、年若いニニギを補佐するために、多くの神を従わせることにした。 コヤネ、フトダマ、ウズメ、イシコリドメ、タマノオヤの5人の神を五伴緒として、ニニギの周りでサポートさせることにした。 さらに祭祀や政治をつかさどる神としてオモイカネ・…

ニニギに降臨を命じる

日本の国はオオクニヌシの支配を離れ、アマテラスのものとなった。 早速アマテラスは、長男オシホミミを呼び出し、日本の国を治めるべく高天原から降りるよう命じた。 しかしオシホミミはあまり乗り気ではなかった。一度、天の浮橋までは行ったものの、その…

国譲り、完結

タケミカヅチが出雲の国に戻ると、オオクニヌシはまだ海岸に立っていた。 タケミカヅチはオオクニヌシに向かって言う 「そなたの子らは日本の国を天の御子に献上するといった。そなたの心はどうか?」 既にオオクニヌシの気持ちは固まっていた。 「私の二人…

タケミナカタ、降参する

オオクニヌシはもう一人の息子のほうを振り返り、言った 「タケミナカタ、お前はどう考える?」 しかしタケミナカタと呼ばれた神は、そこには居なかった。 彼はというと、波打ち際のタケミカヅチのほうに向かって歩いていた。 どこから持ってきたのか、両手…

コトシロヌシの答え

オオクニヌシが息子の一人に向かって言った 「コトシロヌシ、お前はどう思う」 コトシロヌシと呼ばれた神はと言うと、その表情は青ざめ、震えていた。 無理もない、コトシロヌシは気が弱く、オオクニヌシのもと文官として仕えていたのだ。タケミカヅチの恐ろ…

タケミカヅチとオオクニヌシ

タケミカヅチとアマノトリフネはそろって出雲の国、伊耶佐の小浜に降り立った。早速アマノトリフネはオオクニヌシを呼び出しに行った。 もはや、ホヒやワカヒコのようなじれったいことはしない。 オオクニヌシに会うと 「アマテラス大御神の使者としてタケミ…

タケミカヅチを派遣

ここは高天原。たびたびオオクニヌシの支配する日本に使者を出し統治権を譲渡させようとするが、使者はことごとくオオクニヌシのもとに寝返って失敗してしまう。アマテラスの焦燥感たるやピークに達していた。 アマテラスは天の安川に八百万の神々を集めた。…

ワカヒコの葬儀に現れたのは

タカミムスビが投げ返した矢はワカヒコの胸を貫いた。妻のシタテルヒメが泣く声は風に乗って高天原まで届き、高天原の神々はワカヒコの死を知った。 ワカヒコの死は父のクニタマとその妻も知ることとなった。父神と母神は嘆き悲しみ、日本の国へ降りていって…

矢が飛んできた!

ワカヒコはナキメに狙いを定め、弓を引く。そして射った。 ひゅー とうなりをたてて矢は飛んでいく。そしてナキメに命中した。 ケーン!! 甲高い叫び声をあげてナキメは木から落ちた。 矢はナキメを貫いて遥かかなたに飛んで行った。 ワカヒコが射った矢は…

ナキメ、啼く

雉の女神ナキメは天から日本に降りていった。 ナキメは空から日本の国を見渡し、ワカヒコの屋敷を見つけるとそこを目指して降りていった。 ナキメは屋敷の入り口にあった桂の木の枝にとまり、啼いた。 その声は 「ワカヒコ、そなたを日本に遣わしたのは、日…

雉のナキメが遣わされる

ワカヒコも8年もの間帰ってこない。 しびれを切らしたアマテラスとタカミムスビは、三度、八百万の神を集めていった。 「葦原の中つ国を今支配しているオオクニヌシを教え諭し、国を私のもとに取り戻すために派遣したホヒに続き、ワカヒコも帰ってきません。…

ワカヒコの葛藤

ワカヒコはシタテルヒメをオオクニヌシの屋敷まで送り届けた。オオクニヌシはワカヒコに感謝し、歓迎した。しばらくワカヒコはオオクニヌシの屋敷に滞在することになった。 ワカヒコは熱心にシタテルヒメの看病を行い、シタテルヒメは感謝で答えた。やがてそ…

ワカヒコ、シタテルヒメと出会う

ワカヒコは出雲の国に降り立ち、歩いていた。 「さあ、どのようにして、オオクニヌシと国譲りの交渉をしたものか・・・」 なにしろ日本の国はオオクニヌシの尽力で栄え、発展しているのだ。しかもオオクニヌシは出雲を救ったスサノオの直系である。 いくら日…

ワカヒコの派遣

ここは高天原。 ホヒが高天原から地上に降り、3年の月日が経った。 タカミムスビとアマテラスは焦っていた。何しろ、この3年という間、ホヒからは何の報告もないのだ。 タカミムスビとアマテラスは、再び天の安川に八百万の神を集めた。 アマテラスが厳かに…

ホヒ、寝返る

早速スサノオとの誓約で誕生した、アマテラスの御子五柱の男神の次男、ホヒが高天原から地上のオオクニヌシのもとに派遣された。 しかし、ホヒの足取りは重かった。 天の浮橋から地上に向かう道すがら、ホヒは考えていた。 ・・・果たして絶大な権力を持ち、…

神々を集める

オシホミミの報告を受けアマテラスとタカミムスビは、天の安川の河原に、高天原に居る八百万の神を集めさせた。 アマテラスは八百万の神の前で言った。 「葦が豊かに茂る日本の国は、太陽神であるわたしの血筋の神が本来統治すべき国です。しかし今、オオク…

オシホミミ、帰る

オシホミミは従者とともに、天の浮橋に立って地上を見つめていた。ここから見下ろすと、地上の日本のことが手に取るようによくわかる。 日本の国は、オオクニヌシのもと栄えていた。それだけではない、オオクニヌシは民の人心もつかんでおり、日本の国はオオ…

アマテラス、焦る

さて、ここは高天原。太陽神アマテラスは、日本の国を見下ろしていた。 日本は清らかな水に恵まれ、葦が茂り千年先までも稲穂が実る豊かな国である。 しかし、その実りは太陽が大地を照らしてこそである。太陽神アマテラスは、この日本の国は当然自分の子孫…

オオモノヌシ

スクナビコナという心強い右腕を失ったオオクニヌシ、その心は沈んでいた。 しかしオオクニヌシは日本の統治者である。いつまでも落ち込んでいるわけにはいかなかった。オオクニヌシは日本の国を治めるため多忙な毎日を送っていた。 ある日、オオクニヌシは…

スクナビコナ、去る

ある日、オオクニヌシとスクナビコナは伯耆の国に来ていた。ここはスクナビコナの尽力により豊かな粟の畑が広がっていた。 一面に広がる粟を見ながら、オオクニヌシがスクナヒコナに言った。 「どうだろう、私とそなたが作ったこの日本の国、よくなっている…

クエビコとスクナビコナ

オオクニヌシは、海からやってきた小さな神を連れて、クエビコのもとにやってきた。 クエビコは山田のカカシの神である。カカシだから歩くことはできない。しかし昼も夜も、雨の日も風の日も、一本の足でじっと立って周囲を見渡している。なので世の中のこと…

海から来た小さな神

さて、オオクニヌシが出雲の国を巡行し、美保岬に来ていた時だった。 オオクニヌシが海を見つめてみると、沖のほうから何か流れてくるのが見えた。 普通ならそんなもの、気にも留めないだろう。しかしなぜかオオクニヌシは、興味を惹かれるものを感じ、浜辺…

オオクニヌシとスセリヒメ

オオクニヌシはスセリヒメを正妻とし、ヤガミヒメを迎え入れただけではまだ飽き足らなかった。 越の国にいるヌナカワヒメが絶世の美女だと聞くと、わざわざ自ら出向き求婚したのである。 嫉妬深いスセリヒメがそんなオオクニヌシの行動を許すはずもない。出…

因幡の姫神は・・・

ところで、拙ブログをご覧の皆様は、ヤガミヒメを覚えていらっしゃるだろうか。 オオアナムヂが助けた白うさぎの予言通り「嫁に行くならオオアナムヂ様のところに行きたい」と言った因幡の姫神である。 もとはと言えばこれがもととなって、オオアナムヂは求…

オオクニヌシ、日本を支配する

出雲の国に帰ってきたオオアナムヂ改めオオクニヌシは、正に無敵だった。 スサノオが見抜いた通り、もともとオオクニヌシは国の統治者としてふさわしい素質を持っている。そしてスサノオの数々の試練を乗り越えて、今までのような強い者の陰に隠れる存在では…

オオクニヌシに変身

スサノオは大いびきをかいて眠り込んでしまった。 それを見たオオアナムヂは、よし、いまだ、と思った。そして部屋の隅にいたスセリヒメに目で合図した。一緒に行こう!・・と。 スセリヒメもオオアナムヂが意図するものを感じ取った。そしてオオアナムヂの…

オオアナムヂ、シラミを取ろうとすると・・

宮殿に帰ると、スサノオは広間にゴロンと横になるなり言った。 「オオアナムヂ!頭のシラミを取ってくれ!かゆくてたまらん」 オオアナムヂは「はい」とかしこまると、横になったスサノオの頭の後ろに膝まづいた。 そしてスサノオの長い髪の毛をかき分けると…

オオアナムヂ、生還する

さて翌朝。 スセリヒメは一面の焼け野原に立っていた。 オオアナムヂがいないことに気づいたスセリヒメは、父神スサノオからことの経過を聞き、取るものもとりあえず急いででやってきたのである。 目の前に広がる一面の焼け野原・・・猛火に巻かれたオオアナ…

ネズミに助けられる

その日の昼過ぎ、スサノオはオオアナムヂを根の国の広い野原に連れ出していた。 スサノオはおもむろに、弓に鳴鏑(なりかぶら)の矢をつがえて、野原に向かって射った。鳴鏑はひゅーと音を立てながら、スサノオとオオアナムヂが立っているはるか先のほうまで…

蜂とムカデとオオアナムヂ

翌朝。 スサノオは愉快そうだった。 「はっはっは、オオアナムヂの野郎、どうしたかな。まあ、あのオオアナムヂのことだから、死ぬことは無いだろうが・・・それでも蛇にまとわりつかれて、一睡もできんかったろうな。 おい、スセリ!オオアナムヂをここに連…