さて翌朝。
スセリヒメは一面の焼け野原に立っていた。
オオアナムヂがいないことに気づいたスセリヒメは、父神スサノオからことの経過を聞き、取るものもとりあえず急いででやってきたのである。
目の前に広がる一面の焼け野原・・・猛火に巻かれたオオアナムヂが生きているとはとても思えない。スセリヒメはオオアナムヂがもう死んだと思い、目に涙を浮かべていた。
そこにスサノオも歩いてきた。
焼け野原に立っているスセリヒメ・・・
泣いているスセリヒメを見つけていった。
「おい、スセリ・・・お前、まさか、オオアナムヂを・・・」
しかしその父神の言葉も耳に入らないくらい、スセリヒメは茫然としていた。
そこに、焼け野原のほうからゆっくり近づいてくる人影があった。
「オオアナムヂさま!」
それまで泣いていたスセリヒメは喜びの声を上げた。そう、洞穴で猛火をやり過ごしたオオアナムヂだった。
二人に近づいたオオアナムヂは、スセリヒメに目で合図した。スセリヒメの表情が緩む。
しかしスサノオは険しい顔つきのままだった。
スサノオにオオアナムヂは歩み寄ると、一本の矢を差し出した。
「鳴鏑(なりかぶら)の矢を持ってまいりました。矢羽はなくなってしまいましたが」
スサノオは表情も変えずに矢を受け取ると「ご苦労」と言っただけだった。
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