古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオアナムヂ、生還する

f:id:karibatakurou:20190716095416j:plain

 

さて翌朝。

スセリヒメは一面の焼け野原に立っていた。

 

オオアナムヂがいないことに気づいたスセリヒメは、父神スサノオからことの経過を聞き、取るものもとりあえず急いででやってきたのである。

 

目の前に広がる一面の焼け野原・・・猛火に巻かれたオオアナムヂが生きているとはとても思えない。スセリヒメはオオアナムヂがもう死んだと思い、目に涙を浮かべていた。

 

そこにスサノオも歩いてきた。

焼け野原に立っているスセリヒメ・・・

 

泣いているスセリヒメを見つけていった。

「おい、スセリ・・・お前、まさか、オオアナムヂを・・・」

 

しかしその父神の言葉も耳に入らないくらい、スセリヒメは茫然としていた。

 

そこに、焼け野原のほうからゆっくり近づいてくる人影があった。

 

「オオアナムヂさま!」

それまで泣いていたスセリヒメは喜びの声を上げた。そう、洞穴で猛火をやり過ごしたオオアナムヂだった。

 

二人に近づいたオオアナムヂは、スセリヒメに目で合図した。スセリヒメの表情が緩む。

 

しかしスサノオは険しい顔つきのままだった。

スサノオにオオアナムヂは歩み寄ると、一本の矢を差し出した。

「鳴鏑(なりかぶら)の矢を持ってまいりました。矢羽はなくなってしまいましたが」

 

スサノオは表情も変えずに矢を受け取ると「ご苦労」と言っただけだった。

 

前<<<  ネズミに助けられる - 古事記の話

次>>>  オオアナムヂ、シラミを取ろうとすると・・ - 古事記の話

 

古事記の話 目次

 

 

 ≪リンク≫
 
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話