オシホミミの報告を受けアマテラスとタカミムスビは、天の安川の河原に、高天原に居る八百万の神を集めさせた。
アマテラスは八百万の神の前で言った。
「葦が豊かに茂る日本の国は、太陽神であるわたしの血筋の神が本来統治すべき国です。しかし今、オオクニヌシが統治しています。
日本の国は私のもとに取り返さなければならない。何か、良い方法があるだろうか」
八百万の神は黙っていた。するとその中の一人、オモイカネが口を開いた。オモイカネはその名の通り思慮の神である。アマテラスが岩屋に籠った時はその力を発揮し、見事にアマテラスを岩屋から外に出すことに成功した。
「アマテラスさま、権力には正当性が必要です。オオクニヌシは出雲の英雄スサノオの直系という正当性を持っています。もし仮に、武力でオオクニヌシを攻めて勝ったとしても、正当な統治者を奪われた日本の民は我々に従わないかもしれません。
しかしアマテラスさまは太陽神であり、日本の国は太陽に照らされて豊かな実りを享受しています。正当性という点では、アマテラスさまのほうがオオクニヌシよりも上にあります」
オモイカネは一気にそれだけ言うと、一息つき、続ける。
「アマテラスさま、ここはオオクニヌシから日本の国を譲ってもらうのが一番良いかと考えます。オオクニヌシから日本の国は本来アマテラスさまの御子が治める国だと宣言してもらえば、日本の民はみなアマテラスさまの御子のもとに従うでしょう。
そのためには、オオクニヌシを教え諭すために神を派遣しなければなりません。」
「では、どの神を地上に派遣したらいいでしょうか」アマテラスが問う。
「ここはアマテラスさまの御子のおひとりである、オシホミミさまの弟君ホヒさまを遣わしてみてはいかがでしょうか」
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☆天の安川
天の安川は天界の高天原を流れている川とされています。高天原神話にはよく登場します。
今回のように神様が合議をするのも天の安川だし、スサノオとアマテラスが対峙して子を産んだのも天の安川でした。