古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

矢が飛んできた!

 

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ワカヒコはナキメに狙いを定め、弓を引く。そして射った。

 

ひゅー とうなりをたてて矢は飛んでいく。そしてナキメに命中した。

 

ケーン!! 甲高い叫び声をあげてナキメは木から落ちた。

矢はナキメを貫いて遥かかなたに飛んで行った。

 

ワカヒコが射った矢は、高天原まで飛んで行ったのだ。そしてなんと、天の安川にいたタカミムスビとアマテラスの前に落ちたのだ。

 

アマテラスは何事かと矢を拾い上げ、タカミムスビに見せた。

 

「これは・・・私がワカヒコに持たせた矢です・・・」

「血がついていますね」

「ええ・・・どういうことでしょう。交渉がうまくいかず、日本の神と戦っているんでしょうか・・・」

「そうかもしれません。しかしワカヒコのもとに遣わした雉のナキメが返ってこないことを見ると、別の可能性もあるかもしれません・・・あまり信じたくはないですが・・・」

そういうと、タカミムスビは矢を持ち、厳かに言った。

 

「ワカヒコが命令に背かず日本の悪い神と戦った矢がここに届いたのであれば、この矢が当たることは無いであろう。ワカヒコが命令に背いたのであれば、この矢はワカヒコに当たるであろうぞ」

 

そういうと、タカミムスビは矢を持ち、高天原の下に見える日本のほうに投げ返した。

 

シタテルヒメが泣く声が風に乗って高天原に届くまで、そう時間はかからなかった。タカミムスビが投げ返した矢は、寝ていたワカヒコの胸を貫いていたのである。

 

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☆高木神

 

拙ブログではタカミムスビで通してますが、古事記ではこの話で突如「高木神(たかぎのかみ)」が現れ「この高木神はタカミムスビの別名である」と注釈がついています。

 

もともとタカミムスビ造化三神の一人で、本来は「別天つ神」と呼ばれる実体のない特別な存在でした。実体がないはずなのになぜか今まで普通に行動していたのですが「高木神」と名前が変わることにより名実ともに現実の存在となった、という解釈もあります。

 

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