タケミカヅチが出雲の国に戻ると、オオクニヌシはまだ海岸に立っていた。
「そなたの子らは日本の国を天の御子に献上するといった。そなたの心はどうか?」
既にオオクニヌシの気持ちは固まっていた。
「私の二人の子が申し上げたことに、私は背きません。日本の国は天つ神の御子に献上いたします。
ただ、一つだけ、お願いがございます。私の神殿をたてていただきたいのです。その神殿は大きな礎石の上に太い柱を立てて、あたかも天に届くようにして建立していただきたいのです。そうしてくだされば私は引退し、神殿の奥に住み、表に出てくることはないでしょう。またコトシロヌシは私の子たちの先頭に立って天つ神にお仕え申し上げます。そうすれば天の意向に背く日本の神は無いでしょう」
と、このように答えた。
「承知した。そなたの願いは聞き届けよう。」
タケミカヅチは厳かに言った。
オオクニヌシは天に背くことがない意志を示すため、多芸志(たぎし)の浜に社をたて、天の御子のために豪華な御饌を供え奉った。
ここにオオクニヌシの降伏条件は受け入れられ、オオクニヌシのために壮大な神殿が建立された。日本の統治権はオオクニヌシから天つ神に禅譲された。
こうして、タケミカヅチは高天原に戻り、日本が天に帰順したことを報告した。
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☆出雲大社
こうして国譲りの交換条件としてオオクニヌシのために造られた神殿が今の出雲大社です。