古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

コトシロヌシの答え

f:id:karibatakurou:20190814053922j:plain

 

オオクニヌシが息子の一人に向かって言った

コトシロヌシ、お前はどう思う」

 

コトシロヌシと呼ばれた神はと言うと、その表情は青ざめ、震えていた。

無理もない、コトシロヌシは気が弱く、オオクニヌシのもと文官として仕えていたのだ。タケミカヅチの恐ろしい姿、恐ろしい声にすっかりおびえ切っていた。

 

しかしおびえながらも、彼は冷静に分析していた。

 

高天原は本気で使者をよこして来ている。もしこの要求を拒絶しようものなら高天原と日本の全面戦争は避けられない。そうなれば勝っても負けても日本の民は大変な犠牲を被るだろう。

 

とはいえ、もしどこの得体も知れない神が攻めてきたのなら、臆病なコトシロヌシであっても正面から戦う道を選んだはずである。

 

しかし今回の相手は高天原を支配するアマテラスである。アマテラスは太陽神であり、日本の繁栄の礎を築いたオオクニヌシと血筋をたどれば同じところにたどり着く。すなわち日本の国を作ったイザナギイザナミである。

 

ならば日本の民の幸せを第一に考えて、オオクニヌシとも遜色ない慈愛に満ちたまつりごとを行ってもらえるだろう。

全面戦争で日本の大切な民が犠牲になるよりもよっぽどいい・・

 

コトシロヌシはその考えを父神オオクニヌシに伝えた。

オオクニヌシは黙ってうなずいていた。同じ考えだったに違いない。

 

コトシロヌシタケミナカタのほうを向き直ると、一礼していった

「日本の国は天の御子に献上いたします」

 

それだけ言うと、自分の身に災いが降りかかることを避ける魔除けだろうか、普通の拍手とは逆に手の甲をパチンと合わせたかと思うと、そのまま後ずさりして草の陰に隠れてしまった。

 

前<<<  タケミカヅチとオオクニヌシ - 古事記の話

次>>>   タケミナカタ、降参する - 古事記の話

 

古事記の話 目次  

 

 

☆柏手

 

f:id:karibatakurou:20190827041219j:plain

 

神社にお参りするとき、ポンポンと手を合わせて拍手(はくしゅ・かしわで)を打ちますね。

 

3世紀、弥生時代の日本の風俗を記した支那の歴史書魏志倭人伝」には

 

「身分の高いものにあった時は、身分の下のものは拍手をして敬う。(支那のように)ひざまずくことは無い。」

 

と記してあり、昔からの日本の風習だったことが分かります。

 

コトシロヌシがやった、手の甲を合わせる逆の拍手というのは、何かのまじないなのでしょうが、定かではありません。

 

≪リンク≫
 
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話