古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ワカヒコの葬儀に現れたのは

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タカミムスビが投げ返した矢はワカヒコの胸を貫いた。妻のシタテルヒメが泣く声は風に乗って高天原まで届き、高天原の神々はワカヒコの死を知った。

 

ワカヒコの死は父のクニタマとその妻も知ることとなった。父神と母神は嘆き悲しみ、日本の国へ降りていって、ワカヒコの葬儀を八日八晩にわたりとり行った。

 

さて、その葬儀の場にシタテルヒメの兄、アジスキタカヒコネが弔問に訪れた。

 

この時、葬儀の場は騒然となった。なにしろこのアジスキタカヒコネ、亡くなったワカヒコに姿形そっくり、よく似ていたのである。

クニタマとその妻はアジスキタカヒコネの手足に取りすがって泣いた

 

「ああ、ワカヒコ!生きてたんだね!お前は死んではいなかったんだね!」

 

ここで怒ったのはワカヒコと間違えられたアジスキタカヒコネである。

手足にすがったクニタマとその妻を乱暴に振り払い、呆然としているワカヒコの父神と母神に向かって怒鳴る。

 

「俺はな、ワカヒコが親しい友人だから弔いに来たんだ!それを、汚らわしい死者と間違えるとは何事だ!」

 

そういって腰に差していた剣を抜いたかと思うと、ワカヒコのために建てられた喪家をズタズタに斬り倒し、足で遠くに蹴飛ばしてしまった。

 

アジスキタカヒコネが怒って返った後・・・

 

荒れ果てた喪家の跡には、クニタマとその妻、それにシタテルヒメが残されていた。クニタマとその妻は呆然とし、途方に暮れている。

 

夫を亡くしたシタテルヒメは、気丈にも二人に寄り添い、そっといたわるように声をかけた。

「あれは私の兄、アジスキタカヒコネだったのです」

 

父神クニタマと、妻の母神がすすり泣く声はいつまでも続いていた・・・。

 

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 古事記の話 目次

 

 

☆喪山

 

親しい友人で会っても死者は死者、穢れたものというのが古代の考え方だったんでしょうね。

 

 このとき、アジスキタカヒコネが蹴とばした喪屋は、美濃の国まで飛んでいきました。現在の岐阜県美濃市大矢田の喪山だと言われています。

  

☆高鴨神社

 

 それにしても、葬儀の席で暴れて建物を蹴っ飛ばすとは、はた迷惑な話ではありますね。しかし今でも奈良県の高鴨神社をはじめ全国で祀られ、京都の加茂神社の祭神もアジスキタカヒコネです。

 

別名は「迦毛大御神(かものおおみかみ)というそうです。古事記で大御神と呼ばれるのはアマテラス(天照大御神)とこのアジスキタカヒコネだけです。

 

 

ja.wikipedia.org

 

 

倭文神社

 

一方シタテルヒメは出雲から伯耆に移り、現在の島根県伯耆湯梨浜町に鎮まったそうです。

 

karibaryokouki.hatenablog.com

 

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