さて、オオクニヌシが出雲の国を巡行し、美保岬に来ていた時だった。
オオクニヌシが海を見つめてみると、沖のほうから何か流れてくるのが見えた。
普通ならそんなもの、気にも留めないだろう。しかしなぜかオオクニヌシは、興味を惹かれるものを感じ、浜辺に立ったままじっと見つめていた。
それは波の流れに乗って、だんだんオオクニヌシのもとに近づいてきた。
・・・ちょっと見には草の実のようだった。しかし、よく見ると、その中に小さな神が見える。その神は蛾の皮をはいで作った着物を着ていた。
小さな神は浜辺にたどり着くと、草の実の舟から降り、オオクニヌシの前でちょこんと一礼した。
オオクニヌシはその小さな神に名を訪ねるが、何も答えない。
従者として付き添ってきた神々に、その素性を知っている者はいないかと問うたが、誰も知ってるものはいなかった。
そこへ茂みの中からのそのそと現れたのは、一匹のヒキガエル。ヒキガエルは「おそらくクエビコに聞けばわかるのではないでしょうか」という。
前<<< オオクニヌシとスセリヒメ - 古事記の話
次>>> クエビコとスクナビコナ - 古事記の話
☆美保岬
美保岬は島根半島の東端にあり、オオクニヌシの神話には何度か登場します。美保神社には、この地によく釣りに来ていたというオオクニヌシの息子、コトシロヌシを祀ってあります。