古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

2021-01-01から1年間の記事一覧

三人の女神が生まれる

オモイカネの自伝 7 スサノオの大神が仰せにになられました。 「姉上・・・ならば、互いにうけいをして、子を産みましょう・・・」 こうしてアマテラス大御神とスサノオの大神のきょうだいは、互いに子を産むことになりました。人の世となった時代では考えら…

男装したアマテラス

オモイカネの自伝 6 スサノオの大神が天の浮橋を昇りきり、高天原に姿を現されました。 そして、アマテラス大御神は・・・ スサノオの大神を出迎えるために、男装されたのです。その時のお姿・・・ その長い髪の毛をみずらに結い直したのです。 そしてそのみ…

高天原が揺れた!

オモイカネの自伝 5 さて、アマテラス大御神とツクヨミの大神のきょうだいの騒動も収まり、しばらく月日がたった、ある日のことでありました。 突如、高天原がぐらぐら揺れだしました。 地震?!・・・いや、そんな馬鹿な!天の上にある高天原で地震など起こ…

五穀の起源

オモイカネの自伝 4 アマテラス大御神とツクヨミの大神は大喧嘩して、その時から昼と夜が分かれることになったのであります。 そして、ツクヨミの大神が神殿から出て行ったあと、アマテラス大御神はわたくしに向かって仰せになりました。 「オモイカネ、ご苦…

日と月

オモイカネの自伝 3 アマテラス大御神の遣いとして、ツクヨミの大神が、地上の日本にいるウケモチの神のもとに降りていきました。 そして数日の後、ツクヨミの大神が帰ってこられました。 神殿に戻ってきたツクヨミの大神にアマテラス大御神が言われました …

アマテラスとツクヨミ

オモイカネの自伝 2 わたくしが高天原で、タカミムスビの子として生まれてしばらくしてのことでございます。 地上の日本から、それは尊い二人の神様が昇ってまいりました。このお二人は、日本をおつくりになったイザナギの大神の御子でありました。 おひとり…

オモイカネの自伝 プロローグ

オモイカネの自伝 1 わたくしの名はオモイカネと申します。 わたくしは高天原に生まれた神であります。そして高天原ではアマテラス大御神に仕えてまいりました。そしてアマテラス大御神からの御命令で、ニニギさまのお伴をして日向の高千穂に降りてきたので…

海幸と山幸

ニニギの自伝 17 我が后コノハナサクヤヒメが、命を懸けて我が子だと証明して見せた三人の子。それぞれホデリ、ホスセリ、ホオリと名付けた。 このうち次男ホスセリは、残念ながら病がもとで数え3歳の誕生日を迎えることなく、早逝してしまった。 しかし長男…

炎の中で生まれた子

ニニギの自伝 16 「ならば証明して見せましょう!この子が天の神の御子であることを!! この子が天の神の御子であるならば、無事に生まれてきます。しかしこの土地の神の子であれば無事にはすまないでしょう!!」 そういったコノハナサクヤヒメは、すっと…

コノハナサクヤヒメ、怒る

ニニギの自伝 15 さて、巡幸から高千穂の宮に戻って数か月。その間、わたしは留守中に溜まった政務に忙殺されていた。 しかしそれもめどがついたので、わたしは仮宮に残してきたコノハナサクヤヒメを高千穂宮に迎え入れることにした。 わたしは自ら、仮宮の…

オオヤマツミから・・・

ニニギの自伝 14 イワナガヒメを帰した後、わたしはコノハナサクヤヒメと一夜を共にした。 その翌日、わたしは巡幸先の仮宮を出発し、高千穂の宮に帰っていった。 コノハナサクヤヒメも一緒に連れて帰りたかったが、何分急なことだったので、旅の準備も何も…

イワナガヒメは・・

ニニギの自伝 13 「イワナガヒメ、そなたも顔を上げるがよい」 わたしが言うと、イワナガヒメはゆっくり顔を上げた。 「ニニギさま、イワナガヒメと申します。不束者ではございますが、よろしくお願いいたします」 イワナガヒメは挨拶する。しかし・・・ ・…

コノハナサクヤヒメが来てくれた

ニニギの自伝 12 翌日、わたしはコノハナサクヤヒメとイワナガヒメを迎え入れることになった。 その日の午後、二人の姉妹は、わたしが滞在している巡幸先の仮宮に入った。仮宮の一室で待機しているという。 わたしは逸る心を抑えながら、二人が待つ部屋へ向…

美しい娘がいた!

ニニギの自伝 11 さて、わたしが高千穂に降臨して数か月がたった。このころになると身の周りも落ち着き、わたしは政務に精を出していた。 そんなある日、わたしは高千穂の宮を離れ、巡幸に出ていた。民の暮らす村々を見て回り、民からの歓迎を受けつつ様々な…

ナマコ

ニニギの自伝 10 サルタビコを伊勢まで送り届けたウズメが帰ってきた。 「ウズメ、ご苦労だった」 「恐れ入ります。 それで、ニニギさま、サルタビコ殿をお送りし、帰る途中でのことでございますが・・・」 そういって、ウズメは旅の途中の出来事を語り始め…

サルタビコ、伊勢に帰る

ニニギの自伝 9 わたしは高千穂の宮で、日本の国の統治に乗り出した。 ところで、わたしをくしふる嶽まで導いてきてくれたサルタビコだが、高千穂の宮でもしばらくわたしのそばに仕えていた。 何しろ、日本の国の統治を任されたとはいえ、降りてきてからは何…

高千穂に宮を置く

ニニギの自伝 8 わたしは天つ神として、日本の統治を行うために、高千穂のくしふる嶽に降臨した。 しかしここから先は、われわれにとって未知の領域だ。この先、どんな危険が待っているかわからない。 日本の民にとっては、我々が彼らの国を奪った侵略者に見…

日本の地を踏む

ニニギの自伝 7 こうして我々は、高天原を離れていった。 案内役のサルタビコを先導に、八重に重なる雲をかき分けて、天の浮橋を渡って日本に向かい降りていく。 ・・どのくらい進んだだろうか、天の浮島で立ち止まる。そこに立ち、後ろを振り返ると、すでに…

くしふる嶽へ向かう

ウズメは高天原に向かって昇ってくる神の正体を確かめるべく、天の浮橋を降りていった。 一刻後、ウズメは戻ってきて報告した。 「ニニギさま、昇ってきたのは、サルタビコという国つ神でした。ニニギさまが日本に降臨されると聞いて、道案内をするために昇…

ウズメに命じる

わたしが高天原から地上の日本に降りようとしていた時だった。日本から、上は高天原を、下は日本を照らしながら昇ってくる神が見えたのだ・・ この予期せぬ事態に緊張が走る。われわれは「何事か」と動揺した。 まさか、日本の神が反乱を起こしているのでは…

準備は整った

こうしてわたしは日本の統治者として、高天原から地上へ降りることになった。 アマテラス大御神から日本の統治者に任ぜられたことに、わたしはまたとない栄誉を感じていた。その一方でわたしに一国の統治ができるのか、大きな不安があった。 そんなわたしの…

天降を拝命する

ニニギの自伝 3 わたしは祖母のアマテラス大御神から、日本の統治者として日本に降りるよう命じられた。 「え・・・わたしが・・・」 わたしは戸惑った。おもわず、そばに控えていた父のオシホミミのほうを振り向く。 オシホミミは言った 「ニニギ!わたしは…

日本に降りていきなさい

わたしはある日、祖母アマテラス大御神に呼び出された。 わたしなんかに何の用だろう・・・とにかくアマテラス大御神の神殿に赴いた。 そこには祖母アマテラス大御神と、父のオシホミミが待っていた。 わたしは二人の前に進み出た・・・ アマテラス大御神は…

ニニギの自伝 プロローグ

わたしの名はニニギ。高天原に生まれた神だ。と言っても今、日本に降りて日向の地にいる。 神なのだが、わたしには寿命というものができてしまった。その寿命ももう尽きようとしている。 寿命が尽きる前に、わたしの不思議な生涯をこうして書き記しておきた…

オオクニヌシよ!!

とにかく、逃げたオオナムヂとスセリヒメを追いかけねば!! わたしは髪の毛に結び付いた柱をほどこうとしたが、からまってなかなかほどけない・・・えい!面倒な! わたしは十束の剣(とつかのつるぎ)を手に取ると、それで柱ごと髪の毛を切った。そして柱…

逃げ出した!!

ぐわわ~~ん!! 突如、大きな音がひびいた・・・ ・・・そうだ、わたしはオオナムヂに頭のシラミ・・・いや、ムカデを取ってもらっている最中に眠り込んでしまっていた・・・それにしてもなんだ?この大きな音は?! わたしはすぐに、ガバッと跳ね起きた。…

シラミをとれ!

焼け野原から戻った我々は、宮殿の広間に入って行った。 広間に入るなり、わたしはゴロンと横になった。 向こうの壁のほうを向いてから、オオナムヂに背中越しに言った。 「ああ、オオナムヂ!頭がかゆくてたまらん!頭のシラミをとってくれ!!」 「はい、…

焼け野からオオナムヂが

まだ煙がくすぶる焼け野原の向こうから、ゆっくりと人影が近づいてくる・・・オオナムヂだ。 この大火の中を乗り切ったわけか・・さすがだ。 しかしどうやって、この猛火を逃れたのだろうか・・ オオナムヂはゆっくり近づいてきた。その身体、やけどひとつし…

火に巻かれたオオナムヂは・・・

オオナムヂを野原の真ん中に誘い出し、周囲に火矢を放った。枯れ草は勢い良く燃え上がり、四方は火の壁となってオオナムヂに迫ってくる。さあ、この難局をオオナムヂはどうやって抜け出すか・・・楽しみだ・・・ 翌朝 スセリヒメがわたしのもとに来て言った …

火!!

さて、オオナムヂを蜂と百足の室屋に閉じ込めた翌朝、また昨夜と同じようにスセリヒメにオオナムヂを迎えに行かせた。 「スサノオ様、おはようございます。おかげさまで、昨夜もゆっくり眠れました」 オオナムヂは元気よく挨拶する。それはそうだろう、スセ…