古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオヤマツミから・・・

ニニギの自伝  14

 

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イワナガヒメを帰した後、わたしはコノハナサクヤヒメと一夜を共にした。

その翌日、わたしは巡幸先の仮宮を出発し、高千穂の宮に帰っていった。

 

コノハナサクヤヒメも一緒に連れて帰りたかったが、何分急なことだったので、旅の準備も何もできていない。わたしはコノハナサクヤヒメは仮宮に残して帰っていった。いずれ近いうちに迎えに行くつもりである。

 

高千穂の宮に戻って数日たったころであった。わたしのもとに使者が訪れた。コノハナサクヤヒメの父である山の神、オオヤマツミからだった。使者はオオヤマツミからの言上をわたしに伝えた。

 

「天の御子がイワナガヒメを召されたときには、天の御子のお命は雪が降り風が吹いても、何事にたゆまぬ岩のように永遠に動ずるなく続くことでしょう。

また、コノハナサクヤヒメを召されたとき、天の御子の世は木の花が咲くがごとく華やかに栄えることでしょう。

 

そういう思いを込めて、わたくしはニニギさまに、娘二人を並べて送り出しました

 

しかし天の御子は、イワナガヒメは返され、コノハナサクヤヒメ一人だけを御元にとどめ置かれました。

すなわちこれから、天の御子のお命は、木の花のように短いものとなりますでしょう」

 

そういうと、使者は帰っていった。

 

 

その時は何の実感もわかなかった。

ふ~ん・・・そういうものなのか・・・と、思った程度だった。

 

しかしその時以来、寿命ができたのは確かなようだった。

それから年月が経つにつれ、わたしの身体が衰えてきたとき、わたしは永遠の命を奪われ、限られた命となったことを実感することになった。

 

・・・ここにおよんで、山の神オオヤマツミの神呪の強さを実感することになった・・・だが、もう遅い。

 

わたしの子孫は、天の御子の血を受け継ぎながら、代々その命は限られたものとなってしまったのだ・・・

  

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ニニギの自伝 目次

 

天皇の寿命

 

こうしてニニギから続く代々の皇室は、天つ神の子孫でありながら寿命ができてしまいました。

 

天皇で最も長寿だったのは、記録が確実な中では昭和天皇の87歳8か月。これに迫るのが上皇陛下の87歳5か月です(令和3年6月20日現在)。江戸時代前期の後水尾天皇の84歳2か月がこれに続きます。

実在が疑われる初期天皇には100歳を超えるものが多く見られます。

 

短命の天皇では平安時代末期の安徳天皇の6歳4か月が最短で、鎌倉時代四条天皇の10歳10か月がこれに続きます。

 

ちなみにニニギ自身の寿命はというと・・・古事記日本書紀には記載がありません。南北朝時代に書かれた北畠親房の「神皇正統記」によると、これはニニギの寿命ではなく治世期間なのですが「30万8533年」なのだそうです・・・

 
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