古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

くしふる嶽へ向かう

 

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 ウズメは高天原に向かって昇ってくる神の正体を確かめるべく、天の浮橋を降りていった。

一刻後、ウズメは戻ってきて報告した。

 

「ニニギさま、昇ってきたのは、サルタビコという国つ神でした。ニニギさまが日本に降臨されると聞いて、道案内をするために昇ってきたそうです」

「そうか・・・悪い心はもってなかったのだな」

「はい、そのようには見受けられませんでした」

 

そこで、わたしはそのサルタビコを私の前に通させた。

配下の神に連れられて、サルタビコは私の前に進み出た。

 

「ニニギさま、サルタビコと申します。天の御子が日本に降臨されると聞いて、道案内のために昇ってまいりました」

 

そのサルタビコの容貌・・・顔からは七咫(あた)の長い鼻が伸びている。座った高さは七尺はあるだろうか・・・立つと実に七尋(ひろ)、見上げるような大男だ。

口や尻から明るい光を放ち、目は鏡が光るようで、その様は赤いホオズキのようである。

 

その姿にわたしは圧倒された。とはいえウズメの言う通り、邪心をもって昇ってきたわけではないようだ。

 

「そうか、そなたがこの先、道案内をしてくれるのか・・わたしは日本の、どこに降りればいいか、そなたはどう思う?」

「はい、天の御子は、筑紫の日向(ひむか)の高千穂のくしふる嶽に向かうのがよろしいかと思われます」

 

こうして我々は高千穂のくしふる嶽に向かって出発することになった。 

  

 

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ニニギの自伝 目次

 

☆サルタビコ

 

咫(あた)・尺・尋(ひろ)は長さの単位ですが、いずれも異様に大きいことを形容しています。この姿からサルタビコは天狗と同一視されることもあります。

 

サルタビコはニニギの降臨に当たって先導役を務めたことから、道路の分かれ目や村の境界などに祀られている道祖神になったとも云われます。

 

一説にはウズメと結婚したともいわれており、天孫降臨の地・高千穂に建つ荒立神社はサルタビコとウズメの新居だったと云われています。

 

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