オモイカネの自伝 3
アマテラス大御神の遣いとして、ツクヨミの大神が、地上の日本にいるウケモチの神のもとに降りていきました。
そして数日の後、ツクヨミの大神が帰ってこられました。
神殿に戻ってきたツクヨミの大神にアマテラス大御神が言われました
「ツクヨミ、ご苦労でした・・・おや、ウケモチはどうしました?一緒に昇ってきたのではなかったのですか?」
その問いに対するツクヨミの大神の答え・・・それは衝撃的なものでした。
「姉上!ウケモチはわたしが殺しました!」
「なんですって!!」
アマテラス大御神は驚愕して叫びます。
いや、アマテラス大御神だけでなく、その場にいた、わたくしをはじめとする従者の神々にも動揺が走りました。神殿内がざわつきます。
「殺す」とは、穏やかではありません。
ツクヨミの大神は、日本での、ウケモチの神殿の出来事を話し始めました。
ウケモチは、高天原から降りてきたツクヨミの大神を大歓迎しました。そしてツクヨミの大神に山海のさまざまなご馳走をお出しすることにしたのです。
そのとき、ウケモチは、日本の国の中心のほうを向き、その口から白いご飯を吐き出しました。
また、海のほうを向いて、口からは海の魚介類を吐き出しました。
また、山のほうを向いて、口からは山の獲物をはきだしたのです。
これを見たツクヨミの大神は激怒し
「こんな、口から吐き出した穢いものをわたしに食べさせる気か!!」
と、怒りに任せて剣を取り、ウケモチを斬り殺してしまったというのです。
これを聞いたアマテラス大御神のお怒りようは、尋常ではありませんでした。
「ツクヨミ!ウケモチは食物の神ですよ!!体全体が食物でできているのです。そのウケモチの体から出てきたものが穢いわけないでしょう!それを殺すとは、何事ですか!!」
「姉上!そんなことを言われましても、口から吐き出したものが食えるわけないでしょう!!」
「ツクヨミ!まだそんなことをいうのですか!そなたがそんな、道理もわからない神とは思いませんでした。もう、そなたの顔も見たくない!!」
「あー、そうかい!おれだって、こんなわからずやの姉の顔なんか見たくもねーや!お望み通り、ここから出ていくよ!!」
こうして、アマテラス大御神とツクヨミの大神のきょうだいは大げんかして、ツクヨミの大神は神殿を出て行ってしまいました。
この時から、アマテラス大御神が支配する昼と、ツクヨミの大神が支配する夜が完全に分かれてしまいました。
そして、一日のうちに昼と夜が交互に訪れるようになったのでございます。
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この話は日本書紀に別伝として収録してある「一書(あるふみ)」をもとにつくりました。ツクヨミが活動する記紀神話はこれだけで、古事記には出生の記述しかありません。
ところでこの話、古事記ではスサノオの話として伝えられています。スサノオが高天原を追放されたとき、オオゲツヒメに食物を乞いますが同じように殺してしまうのです。
これは、もともとは日と月の神に関する話だったのが、後からスサノオが挿入されたために混乱が起きてしまった、といわれています。
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