ニニギの自伝 13
「イワナガヒメ、そなたも顔を上げるがよい」
わたしが言うと、イワナガヒメはゆっくり顔を上げた。
「ニニギさま、イワナガヒメと申します。不束者ではございますが、よろしくお願いいたします」
イワナガヒメは挨拶する。しかし・・・
・・・・・・
・・・・・・
その言葉は、私の耳を右から左に通り抜けていった・・・
・・・・・・
顔を上げた、そのイワナガヒメ・・・
醜い・・・ごつごつと骨ばり、えらは張っていて・・・男でもこんな不細工ない男はいないだろうと思うような醜さである。
顔だけではない、その身体・・・筋肉が張って角ばっていて・・・
・・・とにかく、女とは思えない醜さである。
・・・しばし、沈黙が流れた・・・
そして、わたしは言った。
「イワナガヒメそなたは帰っていいぞ」
「・・・え・・・それはどういう意味でございますか?・・・」
イワナガヒメは驚愕して問う。明らかに動揺の色が見えた。
わたしとしても心苦しいが・・・しかしこんな女をわたしの后として迎え入れるなど、耐えられない・・・
わたしはイワナガヒメに言い放った。
「ご苦労だった。わたしはコノハナサクヤヒメを召し出したのだ。そなたを召し出したわけではないのだ」
そういうと、わたしはコノハナサクヤヒメを連れてその部屋から出ていった。残されたイワナガヒメは、いつまでも泣いていたようだ。
彼女の心の内を想い図ると、残念だが・・・しかしあの容姿では、わたしはとても受け入れられない・・・
イワナガヒメは泣きながら、侍女に連れられてオオヤマツミの屋敷に帰っていったそうだ・・・
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☆銀鏡神社(しろみじんじゃ)
この後、イワナガヒメは鏡を見ると、あたかも龍のような醜い自分の顔が映ってました。イワナガヒメは嘆き悲しみ鏡を投げました。鏡は龍房山の大木に引っかかり、辺りを白く照らしました。
この鏡をご神体として祀るのが宮崎県西都市の銀鏡神社(しろみじんじゃ)です。
(ただしこの話は記紀には記載されておらず、地元に伝わる伝承のようです)
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