焼け野原から戻った我々は、宮殿の広間に入って行った。
広間に入るなり、わたしはゴロンと横になった。
向こうの壁のほうを向いてから、オオナムヂに背中越しに言った。
「ああ、オオナムヂ!頭がかゆくてたまらん!頭のシラミをとってくれ!!」
「はい、かしこまりました」
オオナムヂは素直にわたしの後ろにしゃがみ込むと、みずらに結ったわたしの髪をほどき、長い髪をかき分けた・・・
・・・すると、オオナムヂの手がそこで止まったようだ・・・まあ無理もない。
わたしの髪にわいているのは、実はシラミではなく、猛毒を持ったムカデなのだ。
さあ、このムカデをどうするか・・・オオナムヂの力を見せてもらおう。
すると、背後でがりがり、ペッと音がする。オオナムヂは何かを吐き出しているようだ・・・
見ると、赤黒い不気味なものが床にべっとりついている。これは・・・百足を噛み潰しているのか・・・
オオナムヂ・・・大した奴だ!猛毒を持ったムカデを素手で取り、噛み潰して吐き出すとは!
こいつこそ、神々の上に立って支配するのにふさわしい神だ!その気になれば出雲の支配者、いや、日本の支配者にだってなれるだろう。
・・・しかし、まだ足りないものがある・・・こいつはあまりに素直すぎる・・・
世の中には支配者に従順なものばかりではない。支配者に服することを潔しとしないもの、反逆を企てるものだってたくさんいる。そうしたものの上に立って本物の支配者と言えるのだ・・・その気概が、今のオオナムヂには全くない・・
せめて、数々の試練を課すわたしに反抗できるような気概程度は持ってもらいたいものだが・・・
そんなことを考えているうちに、不覚にもわたしは眠り込んでしまった・・・
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