古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ウズメに命じる

 

f:id:karibatakurou:20210328090533j:plain

 

わたしが高天原から地上の日本に降りようとしていた時だった。日本から、上は高天原を、下は日本を照らしながら昇ってくる神が見えたのだ・・

 

この予期せぬ事態に緊張が走る。われわれは「何事か」と動揺した。

まさか、日本の神が反乱を起こしているのではあるまいか・・

 

それまで日本の国は出雲のオオクニヌシが支配していた。オオクニヌシは日本の国を豊かな国土に作り上げ、民からはとても慕われていたそうだ。君臣が心を一つにして、日本の国は強くまとまっていたという。

その日本に祖母アマテラス大御神が使者タケミカヅチを派遣し、オオクニヌシとの交渉の結果、日本の統治権オオクニヌシからアマテラス大御神に譲渡されそうだ。

 

しかし、いきなりの統治権の譲渡に反対する神もいるだろう・・・これに納得できない日本の国つ神が、反乱を起こして高天原に昇ってきているのではないか・・・

・・・われわれはそう考えたのだ。

 

そこでわたしは、まずはその神の正体を確かめることにした。

 

わたしに従って降りることになっていた神々の中から、ウズメを呼び出した。ウズメはアマテラス大御神が天の岩屋にこもった時、踊りを披露して大御神を岩屋から引き出す主役を担った神だ。

 

わたしはウズメに命じた。

「ウズメ、そなたは美しくか弱い女神ではあるが、どんな神にも物おじしない威厳を持った神だ。いま、日本から高天原に昇ってくる神の正体は、そなたが明らかにせよ」

「はい、かしこまりました」

 

ウズメは高天原に向かって昇ってくるその神の正体を確かめるべく、天の浮橋を降りていった。

 

  

前<<<  準備は整った - 古事記の話

次>>>  くしふる嶽へ向かう - 古事記の話

 

ニニギの自伝 目次

 

☆ウズメ

 

f:id:karibatakurou:20210514051608j:plain

 

アマテラスが岩戸に隠れたとき、岩戸の前で踊って、これを見た八百万の神はどっと大笑いしました。この様子にアマテラスが岩戸を開けたところを引き出されました。

この「天岩戸」の神話から芸能の神として信仰されています。

 

その後、天孫降臨の神話では、地上から昇ってきた神の正体を明らかにします。

この時、日本書紀によると、なぜか「トップレスで大笑いしながら向かい合った」そうです。そりゃー相手の神も面食らうでしょうね。

 

天岩戸神話で投飛ばされた岩が山になったと伝わる長野県の戸隠山、そこにある戸隠神社を構成する戸隠五社のひとつ、火之御子社にウズメは祀られています。

 

 wikipedia 戸隠神社


 ≪リンク≫
 
小説古事記

古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話