古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

炎の中で生まれた子

ニニギの自伝 16

 

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「ならば証明して見せましょう!この子が天の神の御子であることを!!

この子が天の神の御子であるならば、無事に生まれてきます。しかしこの土地の神の子であれば無事にはすまないでしょう!!」

 

そういったコノハナサクヤヒメは、すっと立ち上がり、仮宮の外に出ていった。

 

「おい、コノハナサクヤ!どこに行く気だ?!」

 

しかし何も答えず、仮宮を出ていくと、そばに建っていた小さな小屋に閉じこもった。そして戸をしっかり締めると、入り口も窓もみんな土で塗り固めてしまった。

これでは中に入ることも外に出ることもできない。

 

「おい!コノハナサクヤ!!もういい、出てこい!」

わたしは小屋の外から叫んで呼び掛けた。しかし、返答はない。

そのうち・・・

 

めらめら、ぱちぱちと音がしてきた・・・

 

・・・火だ!コノハナサクヤヒメがこもった小屋が燃えている!!あいつまさか、この火の中で子を産もうというのか!!

 

「おい、火を消せ!早く!!」

わたしは従者に命じた。しかし薄い板と枯れ草でできた小屋にはたちまち火が回った。とても消火は間に合わない!

小屋が猛火に包まれる!!

 

コノハナサクヤ―!!」

私は叫ぶ。しかしどうすこともできなかった。

 

そして、燃え盛る火の中で・・・

 

おぎゃー おぎゃーー

 

赤子の鳴き声が聞こえる・・・コノハナサクヤヒメ、本当にこの火の中で子を産んだのか?!

 

ついに小屋は轟音とともに焼け落ちた・・・その焼け跡にはコノハナサクヤヒメが立っている・・・三人の赤子を抱いて

 

コノハナサクヤ!無事だったか!」

わたしは急いで駆け寄った。

 

「ニニギさま・・・無事、三つ子が・・・男の子が産まれました。

天の御子、あなたの子です・・・」

 

そういって腕に抱いた赤子をわたしに差し出す。

わたしは涙が止まらなくなっていた・・・すまん、コノハナサクヤ・・・そうだよ、わたしの子だ・・・

 

わたしは泣きながら、我が子を受け取った。

 

・・・コノハナサクヤヒメは、にっこりと笑みを浮かべて、わたしと三人の皇子を見つめていた・・・  

 

  

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ニニギの自伝 目次

 

☆無戸室(うつむろ)

 

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コノハナサクヤヒメが立てこもった小屋、土で塗り固めて出入り口を無くしてしまったので「無戸室(うつむろ)」といわれます。

宮崎市の木花神社、西都市の都万神社、その他各地に伝承地が残っています。

 

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