オモイカネの自伝 4
アマテラス大御神とツクヨミの大神は大喧嘩して、その時から昼と夜が分かれることになったのであります。
そして、ツクヨミの大神が神殿から出て行ったあと、アマテラス大御神はわたくしに向かって仰せになりました。
「オモイカネ、ご苦労ですが、日本に降りてウケモチの様子を見てきてください」
そこでわたくしは、天の浮橋を伝って地上の日本に降りていきました。
そしてウケモチの神の神殿の前まで来ました。この中にはツクヨミの大神に斬り殺された、ウケモチの神の死体が横たわっているでしょう。
わたくしは凄惨な光景を想像し、足がすくみました。しかし、覚悟を決めて神殿の中に足を踏み入れます。
すると、そこには・・・
確かにそこに、ウケモチの死体が横たわっています。しかし、その死体からは・・
ウケモチの頭からは、牛馬が生まれていました。また額からは粟が生えていました。眉からは蚕が這い出し、目からは稗が、腹からは稲が生えてきてます。そして下半身からは、麦と小豆が生えてきておりました。
わたくしはウケモチに手を合わせてから、これらの死体から生えてきたものを手に取り、高天原に持ち帰りました。
そしてアマテラス大御神にこれらを献上いたしました。
これを見たアマテラス大御神は、たいそうお喜びになられました。
「これは人々が生きる糧となるものですよ。これがあれば、日本の民はいつまでも豊かに、生き生きとした暮らしが送れることでしょう」
そういわれて田畑を開き、これらの穀物の種をお植えになられました。
≪宮崎神宮の神田≫
そして、秋には豊かな穂が風になびくようになりました。蚕からは艶のある柔らかな糸が取れました。
そう、瑞穂の国・日本はここにその基礎が固まったといえるのでございます。
前<<< 日と月 - 古事記の話
次>>> 高天原が揺れた! - 古事記の話
☆五穀の起源
五穀とは人類の主食となる重要な五種類の穀物です。この話は五穀の起源として伝えられています。
拙ブログではオモイカネが日本に降りたことにしていますが、日本書紀ではこの時にアマテラスの命により日本に降りてきたのは天熊人(あめのくまひと)となっています。
先述した通り、この話は古事記ではツクヨミではなくスサノオの話として語られています。殺された食物の神はオオゲツヒメ、その死体から生じた作物を採種したのは造化三神のひとり、カミムスビとなっています。
五穀の種類や生じた体の部位も、微妙に異なっています。
≪リンク≫
小説古事記
古事記ゆかりの地を訪ねて
カリバ旅行記
温泉の話
駅弁の話
鉄道唱歌の話