古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

オオクニヌシよ!!

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とにかく、逃げたオオナムヂとスセリヒメを追いかけねば!!

わたしは髪の毛に結び付いた柱をほどこうとしたが、からまってなかなかほどけない・・・えい!面倒な!

 

わたしは十束の剣(とつかのつるぎ)を手に取ると、それで柱ごと髪の毛を切った。そして柱を外し終わると、すぐに二人を追いかけた。

しかしおそかった・・・

 

わたしが追いかけて、逃げる二人の姿が見えたとき、すでに彼らは黄泉比良坂を駆け上がり、日本の国に入ろうとしていたのだ・・・日本に入られてしまったら、もうわたしは追いかけてはいけない・・・もう追いつけない・・・

 

・・・その時、わたしは二人に対する負の感情・・・怒りやくやしさというものが、急速に消え失せていくのを感じた。そして、よくやったと、心の底から二人を祝福する気持ちがわたしの心を覆ったのである・・・

 

わたしは言った

「わっはっは!オオナムヂ!よくやったぞ!!

もう追いかけぬ、追いかけぬから立ち止まって聞け!!」

 

その声にオオナムヂとスセリヒメは逃げる足を止め、わたしのほうを振り返った。

わたしは坂の下から言った。

 

「オオナムヂ!お前が持つ生大刀と生弓矢があれば、お前を虐げている異母兄など簡単に倒せるだろう!お前に逆らう神は山の尾根に追い払い、川の瀬に追い払ってしまえ!

お前はこれからオオクニヌシ大国主命)と名乗るがよい!

宇迦の山のふもとに立派な宮殿を建てて、わたしの娘のスセリヒメを正妻にして日本の国に君臨するがよいぞ!

 

・・・おい、わかったか!この野郎!!」

 

オオナムヂとスセリヒメ、わたしに一礼すると、地上の日本に去っていき姿が見えなくなった。二人とはそれ以来、会っていない。

 

オオナムヂはわたしの言う通り、その後はオオクニヌシと名乗るようになった。オオクニヌシはわたしが見込んだ通り、たちまちのうちに日本の神々を従えて、日本を豊かな国に作り上げていった。

のちに日本の国の統治は、わたしの姉神アマテラスに譲ることになったが、今の日本の礎はオオクニヌシが築いたといっていいだろう。

 

そしてわたしは、根の国にひとりのこされてしまった。

 

それから悠久の時がすぎ、令和の時代となった。

 わたしは今も、根の国から日本の国の繁栄を見守り続けている。

 

 

ーースサノオの自伝 完ーー

 

 

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スサノオの自伝 目次

 

スサノオの自伝、完結です

 

お読みくださいました皆様、ありがとうございました。

 

わがままで自分勝手な乱暴者から、出雲の国で心を入れ替えて英雄となり、根の国ではオオナムヂに死と隣り合う試練を課す。最後はオオナムヂを激励し、オオクニヌシの名を与えて送り出す。スサノオはなんとも多彩な性格を有しています。

そんなスサノオを、一人称で、スサノオ自身の心境の変化など表現してみましたが・・・これが難しいものでした。私の頭脳ではこれで精いっぱい。しかし、古事記に生き生きと描かれたスサノオの魅力を片鱗でも感じていただければ幸いです。

 

 しばらくお休みを頂いた後、また別の神様の「自伝」を書いていきたいと思います。まだ構想もできていませんので今回のお休みは少し長くなるかもしれません。

再開の際はまたよろしくお願いいたします。

 
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