古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

八雲立つ

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おろちはついに、動かなくなった。

 

わたしは屋敷の戸を開けて言った

「おい、おわったぞ!」

その声にアシナヅチテナヅチが出てきた。

辺り一面血の海になり、おろちの残骸が小山のように転がっているその光景に息をのむ。

 

わたしは頭に差した櫛を取ると、それにふっと息を吹きかけた。

櫛は元のクシナダヒメの、美しい姿に戻っていた。

 

こうして八俣のおろちを倒したわたしは、出雲の民から歓迎を受けて迎えられた。わたしとクシナダヒメは、皆の祝福の中で結婚した。

 

わたしはクシナダヒメと暮らす新しい宮殿を建てる場所を出雲国に探していた。そして、須賀の地に来た時だった。

そこは青々とした木々に囲まれ、湧きだす水も清く、豊かな土地だった。

 

「ああ・・・なんという、すがすがしいところだ!ここに来て、わたしの心もすがすがしい!」

 

わたしは思はずつぶやき、その地を須賀と名付けた。わたしはそこにクシナダヒメと暮らす宮殿を造営することにした。

 

宮殿の造営には、おろちの恐怖から解放された出雲の国中の人々が集まった。そしてまたたくまに宮殿は完成した。

 

宮殿が完成した時、一叢の雲が沸き起こった。あたかも我々の将来を祝福するかのように・・

それを見たとき、 わたしは思わず歌を詠んでいた。

 

 

八雲立つ

   出雲八重垣 妻籠みに

     八重垣作る その八重垣を」

 

 

 

いつしか、わたしは出雲の国の支配者となっていた。わたしはアシナヅチを宮殿に呼び寄せ、出雲国の施政長官に任命した。

 

こうしてわたしはこの日本の国で初めて統治機構を完成させたのだ。須賀宮は「日本初の宮」とのちに呼ばれるようになる。

この須賀宮で、わたしはクシナダヒメと二人で過ごしたのだった。今考えても、幸せな生涯だったと思う。

 

そうそう、先におろちの尾わたしが見つけた大刀、神秘的な輝きを放っており、ただの大刀ではないことは明らかだった。わたしはこれを、高天原にいる姉神のアマテラスに献上することにした。

 

この大刀は草薙剣と呼ばれるようになり、三種の神器の一つとして、アマテラスの子孫である皇室に代々受け継がれている。

 

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 ☆須賀神社

 

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「日本初之宮」とも言われる須賀宮。

現在の島根県雲南市須賀神社と言われています。

 

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 ☆草薙剣

 

 

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 アマテラスに献上された剣はその後、三種の神器の一つとして天孫降臨の際ニニギとともに日本に降りてきました。

 

景行天皇の御代、ヤマトタケルが敵の策略で火に巻かれたとき、この刀で草を薙ぎ払って窮地を脱したことから「草薙剣」と言われます。その後ヤマトタケル草薙剣を妻のミヤズヒメに預け、ヤマトタケルの死後、ミヤズヒメは祠を立てて草薙剣を納めました。これが熱田神宮の始まりと言われています。

 

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