古事記の話

古事記を小説風に書き直してみました

ひれ

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その夜、わたしはオオナムヂを「蜂と百足の室屋」に閉じ込めた。その時、宮殿の外に出ていくスセリヒメの姿が目に留まった。いったいどこに行くのだ?

 

わたしはスセリヒメに気づかれないよう気を付けながらあとをつけた。

 

スセリヒメは、オオナムヂを閉じ込めた室屋の前までやってきた。なんだ?何をする気だ?

 

スセリヒメは室屋に開けられた、明り取りの窓から中をのぞき込んでるようだ。そしてオオナムヂに向かって何か話してるようだ・・・一体何のつもりだ?・・・

 

すると、スセリヒメはオオナムヂに一枚の布を手渡した。あれは・・・!

 

・・・蜂と百足除けの「ひれ」、だ・・・あれを振ると、蜂も百足も攻撃をやめて退散してしまう・・・

 

・・・そうか・・・昨夜もスセリヒメは、オオナムヂに蛇除けのひれを渡していたのだな・・・それでオオナムヂは体を横たえて、ゆっくり眠ることができたわけか・・・

 

別にわたしは、怒りの感情などは湧いては来なかった。

味方を得ることも、英雄の条件の一つだ。オオナムヂはスセリヒメを自分の味方につけたわけか・・・上等だ。

 

なかなか見どころのあるやつだ。わたしの子孫だけのことはある。

 

しかし、もうこれからは、こううまくははいかんぞ・・・ふふ、楽しみだ・・・

 

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 ☆ひれ

 

ひれは漢字で「領巾」「肩巾」と書き、古代に女性が首から肩にかけてたらした装飾用の布を言います。

 

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↑「いらすとや」からひろってきたアマテラスのイラスト。このピンクの布が「ひれ」ですね。

 

この「ひれ」は単なる装身具ではなく、これを振ることにより害虫や毒蛇を追い払う呪力を持つと考えられてきました。

 


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